山辺家祖父母の話。

　「背徳・番外」の小話です。
　もともとは私が見た夢の話をメモったものなので、かなり愛想のない話になっています。もう夢の記憶もかなりあやふやになっているのですが……こういう話は書き続けるのが大変なので、これくらいの愛想のなさがいいと思います（←え？）。

　もうすぐクリスマス、という時期なのでちょうど季節的にも合っていると思います。このまま、「背徳・番外」のクリスマス企画（というか年越し企画）に続きます。
　「小さき姫～」の話も出来たら、続けたいですが……どこまで書けるか、はこれからの話の流れにかかっているので、まずは「背徳・番外」のネタをメインに頑張ります。
　ではでは、夢の話へご案内～♪
　山辺家祖父母の話です！

――　背徳の姫君。～山辺志穂の場合・山辺家祖父母の話～　――

　山辺志穂〔やまべ　しほ〕の祖父は少し前に亡くなっている。

　健在の祖母とは、有名なおしどり夫婦で二人の馴れ初めは聞けば一つの一大恋愛小説として成り立ちそうな物語だ。志穂が聞かされたのは母からだったけれど……なんでも、山辺家に嫁いだ時に義理のお姉さんやジジ方の叔母さんに耳打ちされたのだとか。
　祖父と祖母は、いわゆる駆け落ち同然で一緒になった夫婦だ。ジジ方の叔母さんが経緯を話しているあたりから、祖母方の家が二人の仲を認めなかったのだが、その理由は少々ややこしい。
　もちろん、祖母方の家が由緒ある地主のお堅い家柄だったのもあるが、実は祖父が貧乏だから反対したワケではない。
　もともと、祖父は祖母の姉と恋仲だったらしい。
　祖父はお金持ちではなかったけれど、大学の教授職を嘱望される優秀な、そして少しトボけた研究者だった。変わり者のレッテルは多少問題ではあったけれど、将来は有望な青年だったし、恋仲だった姉とは傍から見ても睦まじく関係は順調だった。だから、婚約者として渋々認めていたらしい。
　けれど、研究者だった祖父が事故で一時的に記憶障害をおこしたり、イロイロなすれ違いがあり結局祖母の姉は違う相手との縁談が進んでしまった。
　最後の最後まで二人の間を取り持って、協力していたのが妹だった祖母である。
　自暴自棄になっていた祖父は、祖母が心配して見つけた時明らかに男として最低の場面だったのだそうだ（一体、何をしていたのかな？）。激怒した祖母は泣きながら祖父を「バカ、アホ」と詰り、涙ながらに叩いて「もう知りません！」と言い捨てて帰ってきたのだそうだ。
　祖父には、彼女のそれがひどく効いたらしい。
　しばらくして、祖母の家に電話をかけて運よく祖母が対応して、それは熱烈な告白（「貴女が欲しい」とかなんとか言ったんだって。叔母さんがキャーキャー騒いでた）を彼女にしたそうだ。
　どれだけ、熱烈かと言うとすぐに祖母を掻っ攫いに家まで来たくらい。
　それを、祖母の父親に見つかってほぼ勘当同然で家を出てきたのだと言う。

（そりゃ、ひいじいちゃんも怒るよねぇ）

　と、ぼんやりと考え、志穂は今しがたその山辺家では有名な祖父母の話を繰り返した母に首を傾げた。
　何故、今、その話が必要なのか？
「で、志穂はおばあちゃんの実家って知らないでしょう？」
「うん。だって、おばあちゃん勘当されたって言ってたし」
　その時の祖母は、凛として志穂から見てもかっこいい女性に見えた。少しも後悔なんかない、って微笑んでいるの。
「そう。確かに疎遠なのよ……でも、お姉さんとは和解してるから交流がなくはないの」
「へえ」
　知らなかった。
「この子、北見茉緒〔きたみ　まお〕ちゃんって言うのよ。今度の冬休みに預かることなったから仲良くしてね」

　そう母が差し出した写真には、志穂と同じくらいの年頃の美少女が笑っていて……「おばあちゃんのお姉さんって、すっごい美人？　おじいちゃんてば面食い？」などと考え、かなり遅れて「えーっ？！」と叫んでいた。

　　>>>おわり。