鳴海広之の場合。天使の領分3(終)

　「背徳の姫君・番外」下向き少女と隣の委員長の受験風味の年越し彼視点の第三回、最終話です。
　短いですが、R部分端折ったらこれしかなかったのですよ。申し訳ない。
　次は、北見茉緒視点で三回くらいかな～？　と思います。
　傍から見た純情エロチカカップルと、ちょっと北見家の話も考えてみました。
　由緒正しいお家事情、というのも書いたら楽しいものですね（笑）！

　以下、「背徳の姫君」番外、天使の領分3。彼視点。
　事後の話ですが、彼女の積極性は彼視点じゃないと書き表せないと悟りました。無意識なんですよね、彼氏は大変です。

――　背徳の姫君。～鳴海広之の場合・天使の領分3～　――

　決して、激しく求めたわけではない。
　ゆっくりと、じっくりと 彼女 という 存在 を味わっただけだ。

　ぐったりとなった志穂はトロンとなった眼差しで広之を見、真っ赤になって俯いた。
　空の向こうが白んだ頃、帰り支度を整えた彼がそんな彼女に手を伸ばして長くはない髪を梳く。
「我慢、できそう？」
　くすくすと笑いながら、抱く前に問うたことと同じことを訊く。
「できる、もん」
　と、俯いたままの志穂がたどたどしくも同じ答えを口にして、「そう」と広之が答えれば彼女は泣きそうな表情で顔を上げた。
　布団から体を伸ばし、たぶん全裸だとかいう考慮は今の彼女には抜けているだろうと広之は苦く思いながら、突然の行動にほんの少し意表を突かれた。
　掠る程度のキスをした彼女は頬を染め、「でも。キスは……しても、いい？」とそれは拷問だろう？　と彼が心中で詰ったという無防備な上目遣いで請うた。
「手も、繋ぎたいよ。え……っちは我慢、する。から」
　はーっ、と息をついて、広之は「俺の理性を壊す気か？」と自虐的に呟く。
　無自覚な淫乱。
　わかってはいたけれど、先が思いやられる。
「え？」
「いや。いいよ……溜めると、たぶんロクなことにならないからね」
　お互い、という言葉は呑みこんだ広之が優しく微笑むと、志穂はホッとしたようにのんびりと頬をゆるめてみせた。

　　>>>終わり。