山辺志穂の場合。天使の領分3

　あけましておめでとうございます。
　本年もどうぞまったりとよろしくお願いします。

　年頭から、投稿遅延やってしまっておりますが、気にしない方向で（←コラコラ！）……理由はもちろんあるんですけど。うーん、タイミングが悪かったってコトで一日ほど遅くなりました。
　「背徳の姫君・番外」下向き少女と隣の委員長の受験風味で年越しの続きです。
　R18部分の手前まで。
　R18部分はブログに載せるには抵抗があるので、端折って「隠れ家」にアップする時に載せる予定でいます。
　何気に純情エロチカな二人、イチャイチャしてて困りものです（赤面）。

　以下、「背徳の姫君」番外、天使の領分3。彼女視点。
　次回で彼女視点は終了です。
　彼視点、現在鋭意執筆中！

――　背徳の姫君。～山辺志穂の場合・天使の領分3～　――

　彼は卒のないとても器用な男性〔ひと〕だから、それとすぐに分かる距離のとり方はしない。
　だと言うのに、今回に限っては勝手が違うらしい。
「鳴海くん……」
　志穂の家の前まで来て、気を利かせた茉緒は先に玄関に入っていった。
　キュッと志穂からすれば渾身の勇気をもって彼の手に指を伸ばして、握ったけれど目を上げることは出来ず、しばらくジッと佇む。
　地面から這い上がる冷たさに息をするのも苦しくなった頃、広之の手のひらが頬にかかって胸が跳ねる。
　キス、される？
　そう思ったのに、瞼を開いた先にあったのはほんの少し迷いのあるめずらしい委員長の眼差し。
「あのさ……」
　と言い淀む彼に、志穂の不安が揺らいだ。
「なに？」
「ああ、うん。悪い、ちょっと今……決心が揺らいだ」
　頬を撫で、困ったように笑った。
　……なんの、話？
　と、訊き返す前に口を封じられて、思考が溶ける。
　挿し込まれた舌に心臓がドキドキと高まって、ただ胸に抱きしめられただけなのに体が熱い。
「あーあ、このまま持ち帰れたらいいのに」
　冗談交じりの広之の呟きにビクリ、と身を強張らせて志穂は目をギュッと瞑る。
（わたしも――）
　「嘘だよ」と繋いだ手を解く彼に泣きたくなって、慌てて俯くと逃げるみたいに玄関に走った。



　自分が欲求不満らしい、と自覚した志穂は頬を真っ赤にして動揺した。
（し、したかった……なんて、言えないよぅ～わたしのばかぁ！）
　自分の部屋に駆け上がって、布団の中に潜りこむ。ゴロゴロ身悶えていると、窓が鳴る。
　この合図は久しぶりだ。
　付き合い始めてからは、ほとんど使わなくなった訪問の合図。開けろ、と命じる窓の向こうの彼にぼんやりとなって、再度叩かれたガラスの音にハッとする。
「遅い」
　白い息を吐いた広之が短く言って、志穂は慌てて謝った。
「ご、ごめんなさい」
「まあ、いいけど」
　そっと頬を滑った彼の手のひらは冷たくて、その指の冷たさに身を竦める。見上げた人の眼差しは優しくて、大好きな彼の迷いのないものだった。
「体が冷えたぶんは志穂に、あっためてもらえばいいしね」
「鳴海くん……でも」
「ああ。気づいてた？」
　コクン、と頷く志穂に息を吐いて、「だから、これが最後」と囁く。

　　>>>続きます。