未完成近隣系図。-着信と彼女-

　「未完成近隣系図」の第三回です。
　当初、「未完成～」は中編程度の話にする予定でしたが、テーマが重くてとてもじゃないけど私が（←ココ重要！）耐えられそうになかったので、短くしました。
　なので、書いてる本人もそうですが、読まれている方にとっても何かが足りない話になっていると思います。出来るだけそういう部分はラブで埋め合わせしようと頑張ったのですが……まあ、イロイロ駆け足な展開です。
　気にしたら負けです。

　以下、「未完成近隣系図」着信と彼女。
　今回の視点は、栗石要くんです。
　ということで、美晴に続きうちのFDに入っている人物概要を載せておきます。
　栗石要〔くりいし　かなめ〕･･･>真と愛美のご近所さん＆クラスメート。大人びている、成績は特上の秀才型。父は医者で美晴とは義理の兄妹。学校ではあえて義理とは明かしていない。
　未完成近隣系図では、25歳。たぶん、父親の跡継ぎとして駆け出しの外科医あたりを狙っている。多忙ながら、生来の要領のよさで家にいる美晴を可愛がっている。

――　未完成近隣系図　～着信と彼女～　――

　ポケットに入れていた携帯の電源を入れれば、滅多にかけてこない義妹の彼女からの着信があった。
　栗石要〔くりいし　かなめ〕は目を瞠り、すぐに折り返しのボタンを押す。
『　遅い！　』
　と、電話口の彼女が怒鳴ったので、要は笑ってしまった。
「ごめん。手術が二本入っていて電源入れてなかった。何かあった？」
　何もなければ決して電話なんかかけてこない彼女だから、訊くだけ野暮だと思いつつそれでも興味津々に返答を待つ。
『……春日と連絡、とりたいんだけど』
「ふーん」
『要、あいつとよく会ってるだろ？　連絡先、教えろよ』
「やだよ。なんで、俺が美晴に別の男の連絡先教えなくちゃいけないの？」
『はぁっ？！』
「理由は？　まあ、なくとなく志野原さん関係だとは察するけど……何かあったの？」
『……よく、わかんねぇ！』
　ふて腐れた美晴の声が苛立った様子で吐き出される。
『わかんねぇんだけど、なんかヤバイ気はするっ』
　そう告げて美晴は今日あった志野原愛美〔しのはら　いつみ〕との遣り取りを話して、説明した。
『――で何を思ったんだか匿〔かくま〕えとか急に言い始めて、春日から離れなきゃとか、なんか思い残すことあったとか、一度会うみたいなことブツブツ言って飛び出していったんだけど……』
「へぇ、それはスゴイな」
『そんな悠長なこと言ってる場合か！　春日に言っといた方がいいだろ？　あんな暴走女に急に迫られたらあたしなら 全力で 逃げるっ』
「……美晴ならね。あいつなら慣れてるから平気でしょ？」
　くすくす笑う。と、電話の向こうの彼女も口ごもった。
『うっ、まあ、あたしもそれは……思うけど。でも、今回はなんとなく……ヤバイ気がする、からっ！』
　不器用に心配する様子が可愛くて、少し妬ましい。
（どうせなら、俺とのことでこれくらい必死になればいいのに）
「うん、わかった。確かに忠告はしといた方がいいかもね。志野原さんが思い残すことって言い方が物騒だし、春日なら知ってるかもしれないし」
『うん』
「俺から連絡しとくから」
『お願い、します』
「いいよ。お礼は美晴の体でいただくから、楽しみだな」

『っ……おまえ、嫌い』

　プツリ、と無愛想に切れた電話に要は微笑んで、携帯のアドレス帳を開いた。天の邪鬼な義妹の素直じゃない了承と受け取って、約束を果たすべく「春日真〔かすが　しん〕」の名前を選び出した。

　　>>>続きます。