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裏表一体、日々のこと。
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 「不完全近隣系図」の第十五回です。
 春日(弟)視点の後編……引き続き、姉の話もチロリとふまえてちょっと過去のエピソードです。
 微妙な幼馴染の関係は、じれったくなりますが、それが醍醐味だとも思うワケです。彼女の心境は彼以上に複雑なので、私にもどうすれば彼女はカミングアウトしてくれるのかなあ? と悩んでいるトコロです。
 たぶん、彼が自覚したら少しは動くと思うのですが(^^ゞ
 それは、高校に入ってからの話になりそうです。

 現在、「不完全近隣系図」は中学校卒業後のワンシーンを残すまで書き進めております。たぶん、数日で書き終わりますので、そうしたらテンポよく載せていけるのではないかと思っています。
 全体の描写の年齢制限はR15程度です。
 予定よりも、ちょっとR15描写が増えた……のは、ご愛嬌です。

 以下、「不完全近隣系図」の光(後編)です。
 引き続き、春日(弟)視点。
 この少年は本当に自覚がないんですね。いつ、気づくんだろう? と内心心配しています(一応、布石は置いてますが)。




―― 不完全近隣系図 ~光(後編)~ ――

 階段を上がって姉の部屋の前を通ると、話し声が聞こえた。
 きっと「彼」と電話しているのだと真は思った。詳しい内容は聞き取れないし、真に盗み聞きする趣味はないけれど……口調から察するに先ほどの父親との会話に愚痴をこぼしているようだ。
 姉よりもあの「先輩」の方がしっかりしているから、上手く宥めてくれるに違いない。
 唯子の操縦は誰よりも巧みな人だから、とそれほど顔を合わせているワケではないけれど真はその姉の彼氏である「三崎純也〔みさき じゅんや〕」という男を信用していた。
 何より、男性嫌いの気があった あの 姉が好きになった相手なのだから……逃せば次はいないかもしれない、とも思う。
 姉が恋をするとは、真にとっては晴天の霹靂ともいう出来事だった。
 人に好かれても、自分から好きになることはない姉だった。特に異性に関してはかなりの警戒心があるらしく(これは父親の教育も影響している)好意さえ煩わしいと思っていた節がある。もちろん、姉の周囲にそういう執拗なタイプの好意を向ける輩が多かったのも一因ではあるけれど。
 自分の部屋のベッドにボスンと寝転がって、天井を眺める。

( いつか、あの志野にもそういう相手ができるだろうか? )

 想像がつかないけれど、未来永劫このままというのは姉の前例から見てもないような気がした。
 少し前。
 中学二年に上がった頃だったろうか、愛美が今日みたいに女の子に絡まれたことがあった。
 「付き合っている」ワケでもないのに、真といるのが気に入らないというのだ。
 部活の帰り道、いつものように一緒に帰って……クシャクシャの彼女の髪や体操着姿を思い出して……隣を歩く何事もなかったような(きっとコイツにとっては「そう」なんだろう!)愛美に提案してみたことがあった。
「俺たちが、本当に付き合ったらいいんじゃないか?」
 と。
「真ちゃん……」
 目をまんまるにして驚くと、彼女は首を振った。
 明るく「ダメだよ」と笑う。
「どうして? こんなふうに因縁つけられることも減るんじゃないか? 俺も助けやすいし」
 愛美と付き合っている、と言えれば、周囲にけん制もしやすい。
 いろいろと都合がいいはずだった。
「ダメだよぅ、真ちゃん……そんなことしたら、真ちゃんの邪魔になっちゃうもん」
「はあ?」
「考えてみてよ、わたしと真ちゃんが付き合ってることになったら真ちゃん「彼女持ち」になっちゃうんだよ? そしたら、真ちゃんと仲良くなりたい! って女の子がいても諦められちゃうかもしれない。そんなのイヤだよぅ」
「……だから? 俺はべつに気にしないけど」
 そんなに女の子からモテている自覚はないが、愛美が絡まれているのだから 誰か には好かれているのだろう、と思う。
 が、だから何があるわけでもない。告白をされれば考えるだけだ。
「もぅ、わたしが気になるの!」
 と、何故か彼女の方がムキになった。
「わたし、真ちゃんの幸せの邪魔だけはしたくないんだよ。そりゃあ、わたしがそばにいないのが 一番 いいのは知ってるけど」
 離れたくないんだもん、と頬を膨らませて、俯く。
「真ちゃんが心配してくれるのはすっごく嬉しいけど、今のままがいいの!」
 ポン、と小さな愛美の頭に手を置いて、ぐりぐりと撫でる。
「志野……」
 撫でる真の腕を取り、愛美が顔を上げた。
「あのね、真ちゃん。それでも、本当に、真ちゃんがわたしを好きってことなら付き合ってあげてもいいよ?」
 幸せそうに、エヘヘと笑う。
 一切の思考が、真っ白になった。
「はああ?」
 真の反応にクスクス声を立てて、首を傾げた。
「やだなー、冗談だよぅ! 真ちゃん、好きな子いないの?」
「いねぇよ、バカ!」
 ペシン、と彼女の頭をはたいて、照れ隠しに「まあ、志野ってことはないなー」と意地悪に言ってみる。
「ひどぉーい」
 プンプンと唇を尖らせて、愛美は真を睨んだけれどその目はごく自然に笑っていた。


 この子が幸せになればいい、と願う。

 誰よりも幸せに。

 自分の代わりに守ってくれる相手が彼女の前に現れるまで……その時まで。

 俺は、愛美のそばにいようと決めた。


「とりあえず、勉強するか! 高校落ちたらシャレになんねぇし」
 真はベッドから体を起こすと、机に向かった。頭のいい愛美がランクを落として受ける高校は、それでも真にとっては少し上の進学校だ。
 姉のいる学校でも、ある。
 頑張らねば、落ちたらいろいろな意味で落ちこみそうだ、と問題集を開いて気合を入れた。

  >>>おわり。

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無題
好きじゃないけど付き合ってもいい、なんてちょっと辛いセリフ?愛美ちゃんの気持ちもわかる気がするんだよなぁ。当たり前に受け取れるはずの親の愛情すら受けられずにきた彼女は、どんなに好きでも真くんの気持ちを手に入れようなんて思わないかな。傍にいられるだけでいい。下手に幸せを手にすると、いつかそれが逃げてしまうんじゃないかといつも不安に捕らわれてしまうかも。でも、こんな真くんももし愛美ちゃんにアタックする輩が現れたら、掌中の珠を奪われまいと動く?かな?
mimana 2011/03/08(Tue)08:54:59 編集
そうなんです。
まさに、私がいわんとしている彼女の事情をくんでいただいたコメントでホッとしています。ちゃんと伝わるかな~といつもドキドキしながら書いているので……一人で書いているとどうしても独りよがりになるので、できるだけ単純明快に書くようにしています。でも、それじゃあハラハラ感がないよね~というジレンマ(笑)。彼にライバルが出現するかは、まだ分かりません。が、心境の変化はたぶん近いうちにあるんじゃないですかね(←他人事)?
【2011/03/09 22:44】
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