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裏表一体、日々のこと。
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 「続・番いの帰郷についていく」の第二話。
 帰郷編の後半部のヤマ部分です。
 ちまちまと書いていたせいか、脇役のカップルが当初の予定よりもラブ度が変な方向に上がりました。そんなワケで現在書いているおまけの話はRがついて、しかも少し系統が特殊なものに……表現の仕方がよくわからないのでサラリと流したい気持ちと、ここはガッツリ雰囲気を出したい気持ちが攻防を繰り広げております。
 もう少し王子に酷薄なマニアック臭を出させたい。溺愛系屈折型恋愛……喧嘩しながらイチャイチャして欲しいのですが難しいです。

 以下、「続・番いの帰郷についていく」2。
 王子の部下は苦労人。そんな感じのお話です。







―― 続・番いの帰郷についていく。(2) ――

 外庭の四阿〔あずまや〕にやってきたリリカはそこに備え付けられたベンチに座るようシエンに促して、少し周囲を気にした。
 どうやら彼女の婚約者は、彼女の訴え=「来ないで」を受け入れたらしく、姿は見えなかった。
 ホッとしたようにその目がこちらを見たので、シエンはビクビクと俯いてフード深く被るよう左手で引っ張る。
 息を詰めていると彼女が傍に寄って、おもむろにシエンの握りしめていた右手に手を添えた。
(ひっ!)
 反射的に振り払い、後退る。
「 まあ 」
 聞こえた少女の声は楽しげで、次に聞こえた声はうっとりとしていた。
「流石はおねえさまですわ。このような初々しい、愛らしい反応……なかなかお目にかかれませんわー。ああ、抱きしめたい。白ウサギみたい……ふわふわー」
(ひぃっ、白ウサギじゃなくて白蛇なんですぅぅぅぅ)
 ザザッ、とベンチの行き止まりまで体をずらして首を振った。
「撫でたかったのにー」
 リリカは伸ばしていた手をペタリと膝に落として残念そうにする。無理に触れようとは思っていないらしくシエンはひとまず警戒を解いた。
「……あの人もこれくらいの可愛げがあれば、いいのに」
 ため息まじりにそう言って、オドオドと視線を泳がせる彼に彼女は微笑んだ。
「………」
 あの人、とは婚約者のフェロモン男のことだろうか?
「でも。……好き、なんですよね」
 僕は 大嫌い だけどっ!
 この人の匂いがそう言っている。複雑ではあるけれど、ちゃんとした発情の香りだった。
 イヤーな顔をしたリリカは眉根を寄せると、苦笑いする。

「好きよ。でもね、これ以上 好き にはなりたくないの」

 複雑な人間の感情にシエンはひどく困惑した。


   *** ***


「 同感です 」

 そう言って訪れたのは、腰に剣を刷いた数人の男達だった。それぞれに険しい表情を浮かべた彼らはリリカを見据えると、頭を下げる。
「我らの指揮官レイモンド第二王子殿下との結婚はおすすめできません。考え直すのが良策と考えます」
 リリカは眉を顰めると、「どういうこと?」と不愉快そうに呟いた。
「やっぱり女癖が悪いの?」
 と、腹立たしく震える声を強気に吐き出す。
「いえ。むしろ冷徹な方です、意中の相手以外は眼中にないので」
「……そうなの? 意中の相手がいるの、それならわたしとの話なんか断ればいいのに」
「……はぁ」
 彼女の言葉に何か言いたそうな様子をみせた彼らに、リリカは不審な目を向けて首を傾げた。
「何か?」
「いえ。それでですね、リリカ様には考え直して欲しいのです。この殿下とのご結婚を」
「嫌よ」
 ツンの顎を上げてそっぽを向いた彼女は、キッパリと言った。
「何故です。好きになりたくないんでしょう? そんな相手と結婚してどうするんですか?」
「……それは」
 ムゥと唇を曲げ、言い淀む。色々と複雑な感情を孕んだそれにシエンは(面倒なんだな……人間って)とぼんやりと思った。内情は至極単純で、たぶん少しも心配いらない。
 総毛立つ雄の匂いを感じて、ヤダヤダと思わず顔を顰める。

「私のことが 大好き だから、って言ってやっていいんだよ? リリカ」

 と。
 後ろから彼女を抱き抱え、にこやかに微笑んだのは話題の渦中の彼〔その人〕だった。にこやかに微笑んで、しかし部下の面々をとらえる空気は気のせいかもしれないが、冷ややかだ。
 対峙するレイモンドの部下達は凍りつき、顔色がひどく悪い。
 意を決した彼らは、「何も知らない令嬢を不幸にするワケにはいかない」とか「せめて、素の殿下を知ってもらって」とか「このままでは国際問題になりかねません! ナリタ離婚反対!!」だとか切実に、そして悲壮なまでに口々に言い始める。……ナリタ離婚? とは何だろう?
 首を傾げるシエンの横で、当の殿下も令嬢も彼らの話を聞いてはいなかった。
「だ、大好きって何よっ、嘘くさい貴方なんてキライよ! き・ら・いっ」
「ああ、コレ? だって、リリカ私の素の方が好きだろう? だから、ちょっとイジワルでね……嫌がる君の方が可愛いらしいから」
 にこやかな表情から酷薄に微笑むと、真っ赤に染まった彼女のはくはくする唇を深々と塞いだ。そして、彼女の抵抗が弱まると周囲に目をやって「見たいなら好きなだけどうぞ」とばかりにうっそりと笑った。

  >>>続きます。

 たぶん王子は敵にまわしたら怖い人系です。「殺さなくても人は殺せる」的な発言を笑顔でするタイプです。

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