忍者ブログ
裏表一体、日々のこと。
[895]  [894]  [893]  [892]  [891]  [890]  [889]  [888]  [887]  [886]  [885
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 ご無沙汰しています。
 「近隣系図」とか「陽だまり」とか停滞してる感じ? なんですが、まあ特に切迫した話じゃないので大丈夫だろうということで放置したままです。
 ストックらしきモノはあるのですが、出したら中途半端やな~と言われそうなので、もう一つ何かを挟もうかと考え中です。

 で。
 何を思い立ったか、久しぶりに脳内にこういう場面で何か書けるんじゃね? というお告げがあったので書いてみました。
 舞台の設定も何もなく、ただ一つオチだけ思いついたのです!
 なので、登場人物に名前も何もありません!

 以下、「魔法使いはかく語りき」。
 どこかで見たようなタイトルですが、高尚さは一片もありません。
 妃の一言から、王と魔法使いが話してる……という話。
 魔法使いなだけに、細かくは書いてませんが千里眼な設定はあってもいいかなと思っています。







―― 魔法使いはかく語りき ――

 とある国の、王夫婦の部屋で妃がポツリと呟いた一言に王は少し考えて、しかしその時は何も告げずに妃を呼び、寝台に横になって眠った。
 次の日、彼は国一番と名高い魔法使いを呼び寄せて、魔法使いを困惑させた。
「退屈、ですか?」
 そうだ、とこの国の王様は頷いて魔法使いにどうすれば彼女の退屈を解消できるかを尋ねた。
「……とりあえず、お妃様に訊いてみてはいかがですか?」
「………」
 ジロリ、と王様は魔法使いを見て無言で圧力をかけた。
 それができたら、たぶんお前を呼ばないと言いたいのだろう。
「それでは、私が訊きま――」
「駄目だ」
 と、王様は即答した。
 魔法使いは眉間を寄せて、ため息をこぼす。
「……でも、いくら私でも会ったこともない女性の気持ちなど分かりませんよ?」
「……駄目だ」
 王様も魔法使いに無理難題をつきつけている自覚はあったけれど、妃と魔法使いを会わせるのは許可できなかった。なぜなら、魔法使いという人種は総じて見目麗しく、綺麗な容姿をしていたからだ。
 国一番の誉れ高い目の前の魔法使いもご多分にもれず、見目がよく美しい。キラキラとした姿をしている。
 王様もブサイクではないし、どちらかと言えば端正な部類だった。けれど、魔法使いのそれは常軌を逸した代物で老若男女を問わず、生きとし生けるものすべてを魅了する。犬だって猫だって虫だって彼らに懐くのだ。
 王様はお妃様を信じていたけれど、彼女が一瞬でも魔法使いに目を奪われるのは確実だった。
 浮気とかではなく、魔法使いの魔力とはそういうものだからだ。
「とりあえず、散歩とか歌劇を観に行くとか保養所に旅行するとかしてみたらいかがです?」
 ほとほと困って魔法使いは提案する。一般的なことしかこうなると言えない。
 むっ、と王様は口をひき結んで、執務室の机の上で指を組み、黙考した。

「そうだな。考えてみる」

 しばらくして王様は素直に魔法使いへと頷いた。



 それから王様はお妃様に散歩を提案し、観劇の準備をすすめ、旅行の行き先を尋ねた。
 しかしどれもかんばしい成果をなさず、ふたたび呼び出された魔法使いは不機嫌な王様に「全然駄目だった」と半ば叱責するように告げられた。
「多分ですけれど」
 少し眉をハの字に下げて魔法使いは王様に言った。
「仕事が忙しいとか言って、お妃様お一人で行かせたりとかしてませんよね?」
「………」
 ピクリ、と眉を動かして王様は俯いた。
「馬鹿ですか?」
 と、魔法使いは呆れて少々不敬なことを口走ってしまった。
 ぐっ、と噛みしめた王様は魔法使いを恨めしそうに見た。
「だって、本当に忙しいんだ!」
 彼はぐぐっと呻いて言い訳を吐き出した。
 全然なってない言い訳だったから、魔法使いは容赦しなかった。
「これだから、無口な朴念仁は嫌なんです! 一人で行かせるなんて馬鹿なんですか?! お妃様が浮気をしても私が証人で弁護しますよっ」
「するなっ! 彼女は浮気なんてしないっ」
「ここで惚気けてどうするんですかっ、そんなに大切なお妃様なら尚更大切にすべきですし、忙しいのはわかりますが時間はつくるべきです!」
「……う、うむむ」
 正論を前に苦しげに呻いて、王様は憮然とした。
「に、二ヶ月先でも大丈夫だろうか?」
 とボソボソと口にしたから、魔法使いは肩を竦めて「お妃様に訊いて下さい」と答えた。



 お妃様は二ヶ月先の旅行に二つ返事で喜んだ。
 王様は言葉少なながら、ホッとしたように彼女を呼んで、一緒の寝台で眠った。
 結論として、二ヶ月後の旅行は延期するしかなくなった。王様の仕事が急に入ったわけではなく、お妃様がその頃に体調を崩したためだった。
 ご懐妊。
 その報を知った魔法使いは「退屈とかいいながら、楽しんでいたみたいで良かったですね」と王様に言って、王様は黙って聞いていた。

  >>>おわり。

拍手[3回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
新・アンケート開催中
「機械戦隊スイハンジャー」メンバー募集中!
「うらキロ」発「龍の血族」にて、朱美さんが心酔している特撮モノのメンバーを募集しています。コレこそ! 「機械戦隊」だ!! という家電製品に投票ください(笑)。ちなみに、「スイハンジャー」は確定です。

いつでもあったか「電気ポット」
日本の冬と言えば「こたつ」
日本の夏と言えば「扇風機」
三種の神器のひとつ「電子レンジ」
同じく、「テレビ」
そのほか、家電はコレだ!


結果だけをみる
カレンダー
04 2024/05 06
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
こんなん生息中。
HN:
なお
性別:
女性
住所:
大阪府
職業:
たぶん、そのうち無色。
趣味:
主に恋愛小説の執筆ととめどない落書き。あと、HP運営。
自己紹介:
恋愛小説やら絵やら書いて、裏と表のHPを運営中。ココでは日々のこと、本編の番外か先行掲載を目的にツラツラ生息していこうかと思っています。
新しい日々
こめんと
2013 / 05 / 21 ( Tue ) 21 : 48 : 28
2012 / 02 / 22 ( Wed ) 00 : 16 : 32
2012 / 01 / 20 ( Fri ) 13 : 02 : 04
2012 / 01 / 15 ( Sun ) 22 : 53 : 05
2012 / 01 / 12 ( Thu ) 23 : 03 : 07
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]
Template designed by YURI