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裏表一体、日々のこと。
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 「小さき姫と年の差侯爵」の恋敵編、の第三話です。
 最終話、ってコトで……うむむ、恋敵登場編ってした方が適切でしょうか。
 とりあえず、次の話に続きますって感じですね。

 前回の投稿から間が空きまして申し訳ございません。
 最初の理由は体調不良でした。で、月末だったこともあり仕事(経理関係なので(^^ゞ)のため大事をとって安静にしてました。
 なんか胃腸の調子がすこぶる悪くてですね……あははのは!
 で、安静にしている間に何故か、DSの『世界樹の迷宮Ⅲ』を再びやり始めてしまいまして、着々とレベル上げしてみたりとか(笑)。
 いやぁ、離れていた期間が長かったのでかなり忘れていたりとかするんですけどね、始めるとやっぱりついつい深みにはまってしまうゲームです。
 ちなみに、どうやら『Ⅳ』の製作が始まっているらしいですよ? 気になるトコロですねっ。

 以下、「小さき姫と年の差侯爵」恋敵がやってきた!3。
 こういう主人公二人の関係をもっと全面に出したい、というわたくしめの意気込みを感じていただければと思います。
 なんか、あんまし出ていないというか、出し切れてない感がヒシヒシとするワケですが……残念。




―― 小さき姫と年の差侯爵。恋敵がやってきた!3 ――

 チッ。

 公女にあからさまに舌打ちをされたチサは慌てた。
「なるほど、猛獣を手懐けたか」

「え? えっ??」

 も、もうじゅう? どこにいるの??
「本人が認識する通り――だとすれば、さぞ 臆病な 猛獣じゃ。くくく、よかろう。今日のところは妾が退く」
 ふっと獲物を狙う肉食獣さながらだった眼差しを解いて、彼女はしゃなりと立ち上がると案内を促した。
 侯爵に呼ばれたリザが公女を丁重に扱い、扉を開けて退出するのを待った。
 去り際、それでも公女は慎ましやかに微笑んで、ニコリと念を押した。
「諦めたわけではない。式までじっくり 婚約者 を口説かせてもらうぞ、チサ」
 肉食獣の愉快そうな威嚇に、チサは侯爵の腕に縋って「だ、ダメですっ!!」と涙目で訴えた。


   *** ***


 至極興にいった様子の公女のホ、ホ、ホという喉をせりあがる笑い声が室内に響き、去っていった。
 むぅ、と我ながら子供染みた態度で返してしまったことに少なからず頬を染め、チサは縋っていた腕を放そうとしたが、逆に掴まれ……かと思えば、侯爵が後ろから抱きついてきたから狼狽えた。
 いやっ! 抱きつくっていうか、もたれられてるっていうかネ!?
 おーもーいーっ!
 コテン、と肩にかかる男の頭の重みに心臓が跳ねあがり、その背中に必死に腕を伸ばしてさする。
「だ、大丈夫ですか?」
「うん」
 ハァ、と深い息を吐いたキースは少し頭を持ち上げ、スリスリと彼女の首にすり寄る。
「ごめんね」
 と、彼は謝り、チサははて? と首を傾げた。
「何が、ですか?」
 謝られる理由が解からない。
 もしや公女さまとの不適切な関係(そんなの想像したくもないわっ)があったのだろうか、あるいはやっぱり婚約破棄(いや、やっぱりねとか思っちゃダメ!)とか……あ、謝らないでくださいよぅ!
 チサの不安そうな翡翠の瞳を見たらしい侯爵は、彼女の肩に頭を預けた格好で目だけを上げてフワリと笑いかけた。
「あの方とはそういう関係じゃない。って言うか、怖すぎてとてもじゃないけど食欲なんて沸かないな……そうじゃなくてね、不甲斐なくてごめんってこと」
「不甲斐ない、って?」
 どこかにそんな場面があったろうか? うーん、覚えてないけど。
「本来ならチサと会わさずにお帰りいただきたかったけれど、どうにもあの方は苦手でね。結局、君に甘えてしまった」
 また一つ、ため息をついて侯爵は頬を首筋にすり寄せる。
 キスをするみたいに吸いついて、味見をするみたいに舌を這わせた。
「血が、欲しいのですか?」
「うん」
「あの。甘えてくれちゃって、いいんですよ? キースさま。わたし、とっっても嬉しいですから」
 思わずニヤけるくらい、エヘヘ。
 人から甘えられる、なんて経験は今までになかったことだ。幼い外見から頼りないと思われがちで、どちらかと言えばコンプレックスに近い。
 そんなチサにキースは甘えてくれると言うのだ。こんなに素直に、子どもが母親を求めるみたいに……それが、嬉しい。なんて……おかしいだろうか?
 ふふふ、と侯爵は笑い、チサを見る。
「チサらしいなぁ、そういうトコ」
「え? ぅきゃっ!」
 後ろから抱きつかれていた格好から、肩と膝裏に腕を廻され持ち上げられた小さな彼女は悲鳴を上げた。
「き、キースさま?!」
 二人掛けの椅子に座った彼の上に横抱きのまま座らされ、真っ赤になる。
 時々、こういうふうに扱われることはあったけれど、まったく慣れない。目を上げれば至近距離に侯爵の整った顔があるし、そのアメジストの瞳は何かを求めるみたいに真剣だ。
 何を求めてるか、なんて分かりきっているけれど。
「安心して、もう十分甘えてるから。可愛すぎだよ、チサ。今すぐ食べちゃいたいくらいだ」
「? いいですよ?」
 いつもの食事だと思いチサは答え、キースは困ったように笑んだ。
 けれど、答えたあとすぐに目を閉じた彼女はそんな彼の複雑な表情を見ることはなく、首筋にチクリと走る痛みしか感じなかった。

 あとで、唇をキースの親指が触れ、「猛獣使いには敵わないな」と顎を持ち上げられながら皮肉っぽく言われても何のことだかサッパリで、「猛獣ってどこにいるんですか?」と至極真面目に訊いてしまった。
 だって、本当に分からなかったんだもの! しょうがないよねっ。
 侯爵はそのチサの返答にかなりお気を召したご様子で、ひとしきり笑ってから「今日の夜くらいに、わかるんじゃない?」と額と額をコツンと近づけ、間近で困る彼女を満足そうに見つめた。

 その夜? 猛獣……なんて、出なかったわよ。
 もしかして、からかわれたのかしら――ねぇ?

  >>>おわり。

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