北見茉緒の場合。天使の領分2

　「背徳の姫君・番外」下向き少女と隣の委員長の受験風味の年越し、おまけの彼女の従妹視点の第二回です。
　明日から二月ですね。
　確か、二月に入るまでにこのネタ（年越し～年明け）は終わっているハズだったんですが……おかしいなあ？
　まあ、気にしない！←少しは気にしなさい、という無言の圧力あるですか？　ないですよね。うん！！
　えっと、早めに「隠れ家」の更新します。
　できたら、今週末とか。時間を作って頑張ります。


　以下、「背徳の姫君」番外、天使の領分2。従妹視点。
　ややPG12ってカンジ？　直接表現はありません、ちょっとそういう場面っぽいというだけです。が、そういうアダルトチックな内容が苦手な方は読まない方向でお願いします。
　メインは、北見家の事情の方です。詳細は次回に続く。

――　背徳の姫君。～北見茉緒の場合・天使の領分2～　――

　とは言え、である。
　まさかこういう展開に遭遇するとは、露ほども想像していなかった。二人とも高校生とは言え恋人同士なのだから、キスとかハグは許容範囲だ。もちろん、それ以上も……あって当然と頭では理解しているけれど、どうしてもこの二人だとそういうのに二の足を踏みそうなイメージがあった。
（純情っていうか、特に志穂さんって……そういうの尻ごみしそうだし）
　だと言うのに、どうしたことか――真っ赤になって茉緒は息を殺した。
　衣擦れとともに始まってしまっただろう扉の向こうの物音に固まって、決して盗み聞きをするつもりではないのに聞こえてしまう一部始終。
　よくは分からないが、積極そうに見えなかった彼女の方も結構（むしろ、かなり？）彼との行為に夢中らしい。
「……ぁ！」
　少し開けてしまった扉の向こうから、志穂と思われる女の上擦った声が感極まったみたいに洩れてきて二人が何かをしている肌の擦れあう気配とか、微かな水音とかが否応なしに男女の睦み合いを連想させた。
　扉を早く閉めなければ、と思うのに心の根底にある好奇心がそれを止める。
　少し大きな叫び声を志穂が上げたあと、広之の声がやけにはっきりと聞こえた。
「ほら、声が外に聞こえる。静かに、しないと」
　その言葉に慌てて扉を閉め、茉緒は詰めていた息を吐いた。
　一枚、扉を隔てればかなり物音は遠くなった。それでも、耳を澄ませば中で何が行われているかは想像できそうな音が断続的に届く。
　茉緒がここにいることを広之は知っているのだろうか。まさか、とは思うが彼なら人の気配くらいは感じているのかもしれない。
　茉緒だと知ってあの言葉を聞かせたのであれば、なんて大胆で勘のいい人だろう。
　茉緒がこの場面に遭遇して、騒がず、場を離れることを察しているのだとすれば……正解だ。

　わたしは二人に借りをつくりたい。相談にのってもらうために……。
　そうして、彼は今日のこのことを見逃して欲しいのだ。

　そういうことでしょ？　と勝手に結論付けた茉緒は階下に下りて誰も二階に行かないよう、密かに寝ずの番をすることにした。


　　　　　***　***


　北見家の新年会にやってきた彼女はその事実を知った時、「え？」と聞き直しもう一度その事実を耳に入れたけれど処理しきれなかったらしい。
　絶句、して当事者である茉緒を呆然と見る。
　茉緒は当然、そういう反応を志穂がするだろうと予測していたので心持ち胸を張り、にこりと笑った。
「ね？　志穂さんに相談にのってもらいたい理由が、解かるでしょ？」
「うっ、え？　で、でも……冗談じゃ、ないの？　あるいは、親同士のたわむれとか。ない？　だって、茉緒ちゃんてまだ中学生、なのに……？」
　そう中学生だ。
　この春には、何事もなければ希望の高校に上がれるだろう。
　でも、この話は冗談でも戯れでもない。よくある（ババン！　効果音、お願いします）政略結婚なのである。

　　>>>続きます。