優しいオオカミの葛藤

　受験シーズンまっただ中、というワケでもないですが。
　ポン、と浮かんだので「背徳・番外」の禁欲二人による小ネタです。発情する優等生オオカミと下向きウサギ……というか、今回は捧げ物状態なので別表現でさせていただきました（笑）。

　以下、「背徳の姫君・番外」優しいオオカミの葛藤。
　短く切っているのは、後半がややR18なのと、シチュエーションが特殊（だって、寝込み襲っ……あわわ）なので自主規制しました。「隠れ家」にアップする時は後半部も載せます。
　彼視点だけ書きました。彼女視点は……挑戦してみたけれどあえなく失敗。うーん、彼視点なら上手く書けるのになあ（たぶん）。

――　背徳の姫君・番外。～鳴海広之の場合‐優しいオオカミの葛藤～　――

　コーヒーをのせたお盆を手に部屋に入った鳴海広之〔なるみ　ひろゆき〕は、ほんの少し暢気だなと呆れながら仕方ないかと微笑んだ。とりあえず、手に持った盆は自分の勉強机に置いてコタツの上に顔をのせてスヤスヤと眠る彼女の下に広げられたノートや鉛筆といった受験勉強の道具である一式を避難させる。
　ムニャムニャと唇を動かした山辺志穂〔やまべ　しほ〕はそれでも起きる気配がない。
　三月も近くなった今は受験勉強も追い込みに入っている、いくらボンヤリしているとは言え彼女も連日眠る時間を惜しんで頑張っているのだ。広之もそんなことは知っている。
　なにしろ、彼女とは家が隣で部屋も向かい合っているのだから。電気がついたままの隣の家の窓をいつも見ている。
　そんな彼女の肩に毛布をかけた彼に、彼女の声が呼んだ。
「なるみ、くぅん」
　覗きこんだところ、ニヘラと志穂は笑い……広之はゲンナリした。
　どう考えてみても、色気のある表情ではなかった。だと言うのに――苛立ちながらも、衝動は如何ともしがたい。
（アレに欲情するって、俺も……どうなんだ？）
　たぶん、おそらく、きっと禁欲している現在進行形の今の状況が悪いんだと自らを擁護する。
　スヤスヤと眠る彼女は無防備で、白い毛足の長いセーターはまるで捧げられた子羊のように彼の目には美味しそうに映った。

　　>>>おわり。