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裏表一体、日々のこと。
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 「君を、きっと、好きになる。」続き、彼視点です。
 前の彼女視点からの続き、屋上の場面になります。

 この続きの続き(?)の話も書き始めていますが、どういう展開にしようかな~と手探りで書いているので上手くまとまるかは運頼みだったり。
 しばらく試行錯誤します。投稿に間があかないように頑張ります~!

 以下、「君を、きっと、好きになる。」1-陽一。
 そういや、エイプリルフールを一日過ぎてしまいましたね。嘘つけなかったなー!
 とりあえず、このカップルはしばらく健全にお付き合いすると思います。嘘ぢゃないもん。




―― 君を、きっと、好きになる。1-陽一 ――

「 桜 」

 胸に抱きしめた存在の重みが増して、覗きこむとそこにあった寝顔に唖然とする。スヤスヤと心地よさそうな寝息に、ガックリくるやら可愛いやら。
 男として、無防備に眠られるのは複雑なものがある。こんないかにも襲ってくださいというシチュエーションで手を出さないのは据え膳ではないか?
「 ……… 」
 ひとしきり考えて、彼女を抱く腕を強めると起こさないように屋上の出入り口の側壁に移動して、腰を下ろす。横抱きにした葉山桜〔はやま さくら〕を膝の上にのせ、脱いだ上着を目の遣り場に困る足にかけると、ずれて落ちてしまいそうな眼鏡を外してやった。
 それをワイシャツの胸ポケットに入れて、息を吐く。
 どうせ昼の授業はすでに始まっているし、このまま一限程度休んでも問題はないだろう。逆に遅れて入る方が観衆の注目を浴びて悪目立ちするというもの。面倒なことになるのは、分かりきっている。

 壁に背中を預けて空を仰げば、授業なんて受けるのが馬鹿らしいほどの青空だった。
「いい天気だなぁ」
 そよそよと風が彼女と自分の髪を撫でていく。
 本当は、手を出してもいい。以前の自分ならきっと躊躇うことなく触れたと思う。けれど、今はとても手を出す気持ちにはなれなかった。
 まるで、初めて女の子と付き合うみたいに――。
「チェリーかよ」
 ふっと自分で自分を嘲笑って、一通り恋人同士がすることを桜とは済ませている……というのに、触れることさえ不器用にしか出来そうにないとふっくらとした頬を撫でて、顔を背けた。

(あー、もう。初めてだ――こんな厄介な気持ち)

 頬が熱くて仕方ない。



 五限目の終わりを告げる鐘が鳴る。と、身じろいだ彼女が「んー?」と喉をコクリと動かして瞼を開け、パチパチと瞬いた。
 状況を飲み込むまでに、おおよそ30秒ほど。
 ガバリ、と起き上がった桜は平伏すという言葉がピッタリの姿勢になり、謝った。
「梁瀬くん、ごめんなさい!」
 膝にかけられていた男物の上着を丁寧に畳んでから、差し出す。
「陽一」
「へ?」
「だから、僕の名字じゃなくて名前でいいよ。先刻〔さっき〕はそう呼んだだろう?」
 それが、ひどく嬉しかったのだ。僕は。
 付き合っていた時も、確かに彼女からは名前で呼ばれていたけれど……別れた時に名字呼びに戻してしまった。
 自分が招いたことだが、あの時どうして平気でいられたのか今では信じられない。
「陽一、くん?」
「そう」
 にこり、と微笑むと桜は不思議そうに首を傾けた。
「陽一くん?」
「うん。桜、また一緒に帰ろうか?」
 目を見開いた彼女は潤んだ瞳で、「いいの?」と恐る恐る尋ねてくる。手に持っていた彼女の眼鏡を定位置に戻すと、目を合わせて言う。

「僕と、別れたくないんでしょ。違うの?」

「ち、ちがわないっ。全然間違ってないよっ!! わ、わたし陽一くんと帰りたいですっ。ずっと一緒に帰りたかった……ホントだよ?」
「うん、僕も……たぶん、そうだ」
 緊張していた、みたいだ。
 柄じゃないのにホッとして、彼女の膝の上で行儀よく並んだ両の手にそっと手を伸ばす。
「触れて、いい?」
「うん」
 きっと別れた時、傷つけたはずなのに恨んだ様子もなく、頬を染めた彼女は受け入れる。
 本当は、桜が赦したとしても簡単に触れてはいけないと解っている。
 でも、我慢はできそうになくて……二度と傷つけないから、と身勝手な免罪符を盾に彼女に触れる。

「今日は、手を繋いで帰ろうか?」
「うん!」

 嬉しい、と笑う彼女を今度こそ 大切に 最初から愛したかった。

  >>>「1」終わり。

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