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裏表一体、日々のこと。
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 「ひとつ、短編」の彼視点。
 「君を、きっと、好きになる。(仮題)」どうぞ、生温かい眼差しで見守ってやってください。
 今回、彼視点を書くにあたり……最低な美形の男の子って、難しいということに気づきました! コイツ、一体どこでトラウマを貰ってきたんだろう……きっと、女性関係に何かあったんだ。きっと、女系家族の末っ子長男なんだ……と背景なんてどうでもええねん! と書いているのに、ものごっつー悲惨(苦笑)な幼少期を想像しました。
 採用するかは別にして。
 美形の最低のハズなのに、ちょっと可哀想だなと思う。←あれれ?
 試行錯誤してます。なので、いつもよりさらに迷いのある文章になっているかもしれません。読みにくかった申し訳ありません。精進します!

 以下、「君を、きっと、好きになる。」0-陽一。
 ある意味、我慢比べの様相になっているラスト場面(笑)。
 短気な方が負ける法則で、次回に進む。




―― 君を、きっと、好きになる。0-陽一 ――

 女の子は、見ているだけなら可愛いけれど、愛を囁くには色鮮やかで信じ切れない。
 だから。
 戯れに手折る程度が――ちょうどいい。


 彼女……葉山桜〔はやま さくら〕とも、軽い気持ちで手を出した。周囲の評判や噂話(特に彼女の家族については話題に事欠かない)から、簡単に籠絡するのは難しいかと思われたけれど、「付き合わない?」と誘えば案外すんなりと(少し戸惑いはあったようだけど)OKを貰え、しかもキスもそれ以上も抵抗らしい抵抗はなかった。
 最後の砦だけは、痛いと怯え二、三度機会を逃したけれど、それも昨日でいただいたので彼女と付き合いを続ける僕の理由はなくなった。

「 別れたいんだ 」

 と。
 別れを切り出せば、告白した時と同じように数拍戸惑い、こちらをジッと見上げてくる。
 真っ黒のツヤツヤとした髪を今時珍しいおさげにした小ぶりな顔に、臙脂縁の大きな眼鏡をかけ、二重の瞳とスッと通った鼻梁にさくらんぼのような愛らしい唇をした美人は、最初から自分とは別の次元に住む雰囲気があり……会話が成立したことのほうが、じつは少なかった。
 たぶん、時間の流れ方も「彼女」と「自分」とでは違う。
「はぁ」
「なに? その気の抜けたみたいな返事」
 もし、彼女が別れたくないと言うのなら、このまま関係を続けてもいいかもしれない。
 その程度には、体の相性もよく、眼鏡を外した顔は見惚れるほどで、今まで付き合ってきた女性とは雲泥の差の、煩わしさを感じない相手。
 生きる次元も時間の流れ方も全然違うのに、彼女と居るのは苦痛じゃない。
「……いえ。わかりました……わたし、梁瀬くんと付き合えてよかった。ありがとう」
 頭を下げ、微笑んだ彼女は美しい。
 女が別れを了承したことに残念だと思ったのは、初めてだ(サイテーだと罵られようが、ホッとしたことは山のようにあるのに)。
 手を伸ばしそうになる。
 けれど、自分が振った手前、取り乱すのは己が矜持にとって楽しいことではない。
「変な女」
 ついて出た呟きに、唇を慌てて閉じて誤魔化すように別れを告げた。
 ちょうどよく交差点の信号も青だ。

「じゃあ、バイバイ。葉山さん」
「さようなら」

 手放すには惜しいけれど、彼女も他の花と同じ。すぐに別の花で忘れることが出来る存在だ。
 振り返るつもりはなかった。けれど、振り返ってしまって――彼女が手を振って微笑み、背中を向けられた時、信じられないほど深くどこかが痛んだ。いや、違う。全然。
 動揺しただけだ。嘘じゃない。

(だって、今まで見せたこともなかったろう? そんな可愛い顔)

 だとか。

(その顔で泣いて縋ればいいのに。仕方ないから別れるの……考え直さなくもないよ?)

 だとか。
 どうでもいいけれど無性に自分にとっては柄じゃない、腹立たしい気持ちが沸き上がってきて、目が彼女の姿を追う。
 教室の窓辺のところで、ぼんやりと眺めていると右腕に荷がかかった。自分と彼女が別れたことは、翌日にはクラス内だけでなく学校内全体に広がって、付き合った時と同じように騒がれた。
 そして、別れたと知れると毎度のように寄ってくる女の子たちが、今は少し 邪魔 だ。
「ねーえ? 陽一。遊ぼうよー、今日ミネコたちと集まるんだけど……」
 甘ったれた声が耳のそばで響いて、グッと引き寄せられる。
「んー? 悪い。今日はダメだ」
 用事なんてないけれど、行く気分にはなれない。さりげなく腕を払いのけ、誘いを断る時は笑みを絶やさない。こうすれば、比較的素直に諦めてもらえる。
「また、か……」
「え? なにー?」
「別に。なんでもないよ」
 別れてから、最初こそよく目が合っていたけれど最近はまったくかみ合わなくて……それどころか、さりげなく逸らされているかも。
 気がついて、憮然とした。

 ああ、最悪だ。

 彼女に逃げられると、追いたくなる。肉食獣よろしく、野生じみた焦燥に苛立った。
(本当に、僕の柄じゃないんだって……こういうの)
 手を伸ばして、捕まえて、君に印をつけてしまいたい。花を手折ったのは誰なのか、忘れているのなら思い出すまで教えてあげるよ。

 だから、こっちを。僕を見ろ。


 梁瀬陽一〔やなせ よういち〕――そんな衝動に抗い不機嫌なため息が出る今日、この頃。

  >>>終わり。

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