背徳の姫君。チョコレート挿話0

　「龍」のスイハンジャーネタを考えながら、「そーいや、もうすぐホワイトデーやね」と思い立ち、なんとなーくこの「背徳」メンバーで小話を考えてみようと思いました。
　「背徳の姫君」の三人、三学期の始業式のあとの二月～三月にかけてのお話のつもりです。
　魔属性の二人に、真正王子属性の友人がハラハラするという構図（←え？）が楽しげです。
　あまり、正統なバレンタインデー・ホワイトデーは期待できませんが……よろしければ、しばらくお付き合いください。

　以下、「背徳の姫君」本編番外「チョコレート挿話」0。
　み、短か！
　もうちょっと書くつもりだったのですが、気がついたら日付が変わっていたので諦めました。
　ぼちぼち書いていく予定です。

――　背徳の姫君。～チョコレート挿話0～　――

　生徒会室に入ってきた彼女は、人形のように微笑んで彼にそれを手渡した。

　それは、長くこの国で続けられている行事である。
　２月１４日。
　好きな男へ女がチョコレートを渡す、というのは日本独特の習慣らしいが、定着してしまったそれをあえて否定するつもりはない。
　生徒会室の机でいつものように座って、本を眺めていた真鍋耀〔まなべ　よう〕はその部屋で繰り広げられた年中行事のひとつの光景に目を向けて、すぐに興味を失った。
　幼馴染である名越真希〔なこし　まき〕は、いまだに彼女の前では少し緊張をしている。確かに汐宮清乃〔しおみや　きよの〕という彼女の器はあまり目にすることのない綺麗な代物ではあるだろう。
　艶やかな黒髪に、白い肌、透き通った黒い瞳。高級な日本人形、と言えばそれに近いか。
「　夢のようです　」
　うっとりと口にする真希に、くすくすと清乃は笑った。
「変な人。わたしたち、付き合ってるんでしょう？」
　可愛い彼女の笑顔に真っ赤になった彼は、困ったように「それはそうなんですけど」と口ごもる。

　そうして、チラリと耀の方をうかがった。

　　>>>続きます。