文化祭は準備中！-山辺志穂の場合2

　文化祭前の小話「背徳・番外」の下向き少女視点の二回目。
　彼女の落ち込みはよくあるコトなので、特に何も……なかったり。
　彼視点では、かなりスルーされて別の話になっております。気にしないで～（笑）！

　「いち にの さん」はstep.3まで更新してます。
　今週末にはstep.4をアップ予定。で、読み返してみたらニノ視点のほとんどをショートカットしてるので展開が早いです。
　同じ場面を書くのに飽きたせいなんだけど……せめて合コンの場面は入れたほうがよかったか？　と今更考えております。
　要望があれば、あとで追加する可能性があります。
　そろそろ、クリスマスネタで何か考えないとなあ～と思いつつ、何も頭に浮かびません。スランプではないです。毎年そうですから（←主張していいのか？）！

　以下、背徳・番外「文化祭は準備中！」山辺志穂視点の後半部。
　彼女の手が遅いのか、それとも？
　十中八九は彼女の真面目な性格のせいですね。

――　背徳の姫君。～文化祭は準備中！‐山辺志穂の場合2～　――

「帰るよ」

　と、広之に呼びかけられて志穂は出来る限りの素早さで荷物をまとめ、帰り支度を整えた。が、すでに周囲にクラスメートの姿はなかった。
「ご、ごめんね！」
　謝ると、広之は慣れた様子で「遅い」と彼女の手を取る。
「進んだ？」
「うっ、まあまあ……でも、まだ半分あるかなあ？」
　志穂の答えに、広之の表情は呆れ顔だ。
「教室でずっと縫ってるわりに、進んでないな」
「う、うん。そうなの……みんな、声かけてくれるんだけど……」
　志穂の進行が一番遅れているため、仕事の早い女の子たちが入れかわり、立ちかわりやってきてはアドバイスをしてくれるのだが……なかなか効率は上がらなかった。
　志穂の根っからの仕事の遅さもあるけれど、彼女たちが興味を持っているのは 彼 との付き合いがどういうモノなのか？　ということらしい。
　やっかみもあるが、彼氏持ちの子もいて赤裸々にイロイロと訊かれたりもして、ついつい志穂の緊張が仕事に影響して手が止まったり……いいような悪いような？　と複雑な気持ちになる。
　などとは、広之にはとても言えないので「あと一週間あるし、家でもやるから大丈夫」と顔を上げる。
　と、目の前に彼の顔があった。
　触れるだけのキス。から、少し深いキスになる。
　チュ、と交わす唾液の音が直接脳に響いた。
「な、るみくん？」
　教室でするのは初めてではないけれど、こんなに暗い教室でするのは初めてだった。彼の表情さえ、かげってよく見えない。
「嫌？」
　首を振る。
「じゃあ、もう少し……」
　そう言って広之は、もう一回志穂に貪るようなキスをして「帰ろうか？」と促した。


　　　　　***　***


　次の日も、その次の日も帰りはそんな感じだった。
（鳴海くん、どうしたのかなあ？）
　それ以外は別段、何もないだけに志穂は困惑していた。
「山辺さん、進んでる？」
　今日、何度目かの質問に「うん、まあ……」とせっせと手を動かし、やっぱり卒なく教室の中心で指揮を執る彼に羨望の眼差しを彼女は向けた。

　　>>>彼視点に続く。