北見茉緒の場合。天使の領分1

　「背徳の姫君・番外」下向き少女と隣の委員長の受験風味の年越し、おまけの彼女の従妹視点です。
　三回、くらいで終わります。
　前の書き込みから、まるっと一週間ほど音沙汰がなくなって申し訳ありませんでした。ちょいと軽く風邪をひいてましたよっと。というか、現在進行形ですがね（笑）。
　それに加えて、ＰＣ用フリーのRPGゲームで無駄に遊んでたりもしたわけですが。
　……うーん、ゲーマーの血が騒ぐんですかね？　時々、やりこみたくなるんですよぅ。

　以下、「背徳の姫君」番外、天使の領分1。従妹視点。
　まずは出会いの第一印象から。
　片えくぼの微笑みの裏で、こんなこと考えてました……という話。

――　背徳の姫君。～北見茉緒の場合・天使の領分1～　――

　初めて会った従姉のお姉さんはどこにでもいる、ちょっと地味めの女子高生だった。オドオドとした仔兎みたいな眼差しと小さな声、少し人見知りをするとは話に聞いていたけれど（ちょっと？　って程度じゃないよね）と目の前にして挨拶をした印象で考える。

「いつまで突っ立ってんの？　早く上がれよ、自分の家だろ」
「う、うん。ごめんなさい……」

　出迎えた玄関先での従姉のお姉さんと、その彼氏さんとの遣り取りに目を瞠る。だって、どう動いたらこの二人が付き合う流れになるのか、北見茉緒〔きたみ　まお〕には想像もできなかった。
（気持ちが通い合う要素なんて ひとっつ もなさそうなのに！）
「どうやってこんな素敵な人捕まえたんですか？」
　不躾だとは思ったけれど問い掛けた。おっとりとした、というよりはボンヤリとした彼女から返ってきた「隣人」という答えもあながち外れてはいないだろうけれど、それだけではきっと通い合うはずがない。
　従妹のお姉さんである山辺志穂〔やまべ　しほ〕は隣人の彼に恋はしても告白されれば脱兎のごとく逃げ出しそうな感じだし、隣に住むという彼氏さんである鳴海広之〔なるみ　ひろゆき〕は穏やかそうに見えて惚れこんでいる彼女に対しては容赦がない。
　可愛いという気持ちの顕れなのだろうけれど、臆病そうな志穂には荷が重そうだ。
　付き合っている、今の段階だからこそ何とかバランスを保っているのだろうけれど。
（どうやって、付き合いはじめたのかな？）
　ムクムクと湧きあがった好奇心は抗いようがない。
　通いそうにない想いを通わせる、その方法が……茉緒は知りたい。

「わたしも一緒に勉強しちゃ……お邪魔ですか？」

　気持ちが通いそうにない相手を振り向かせる方法があるのなら、教えて欲しいものだ。純粋に――付き合っている二人の邪魔をしているのは自覚していたけれど、心の中で手を合わせて謝りながら茉緒は「いいよ」という広之の言葉に甘えた。

　　>>>続きます。