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裏表一体、日々のこと。
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 魔王子とメイドの続編。魔王子とメイド、のエトセトラ。彼女視点の前編です。
 今回、ファンタジー色全開とは言え、少しいじめ表現があり……しかも、後半はややR18寄りのR15かな? という場面もあるので、「なろう」様に投稿するにはどうだろう? と悩む代物になりました。
 「ムーン」様の方にすべき内容かもしれません。
 R表現自体は、そんなに激しくないんですけど。たぶん。アッサリ系、のハズ。

 「魔王子とメイド」はもしかすると、「ムーン」様に移して連載するかもしれません。
 未定ですが(^^ゞ

 以下、「魔王子とメイド、のエトセトラ」前編。
 エキストラのみなさーん、出番ですよー!
 暴力的ないじめ表現を含みます。ご注意くださいっ。




―― 魔王子とメイド、のエトセトラ。前編 ――

 学園で人気のある男子生徒が、特定の(冴えない)女子生徒を構えば体育館の裏に呼び出されるのはよくある話だ。

 魔界でだって、そのあたりは代わり映えしないらしい。
 王宮の納戸の裏でルルゥはぼんやりと考える。
 淫魔の群でつまはじきっぽく、一人っきりで遊んでいた頃魔界〔ここ〕ではない人間界に憧れて、アチラの物語だという「らいとのべる」という本を読んだ。
 たとえば。
 魔力のないごく普通の人間の「じょしこーせー」が、魔力のない人間の「せいとかい」の権力者である「せいとかいちょー」に気に入られて、可愛がられる。
 なんていうのが、王道だ。
 その場合、大抵彼女は彼の取り巻きである綺麗な女の子たちに詰め寄られて、こんなふうに戸惑うのだ。

「……えっと。あの、ムリです」

 いくつもの穏やかならざる眼差しを受けて、ルルゥはぶるぶると頭を振った。
( ムリッ、むり、無理ぃぃいい! )
 無理難題だと、ルルゥでさえ解るのに眼前に立つスタイルが良くて器量もすこぶる上等の魔族の少女たちはそれを一切、受け入れない。
 一介のメイド風情が、主人に意見をするなどもってのほかである。
 彼女たちの有能さは、ルルゥだって認めている。というか、ルルゥに比べれば王宮に勤めている誰だって 有能 だ。
 そんなことは、あの 何事にも 器用な主だって見破っている。けれど、その上であえてルルゥを専属に抜擢したのである。選んだ理由はいまだによく解らないけれど、有能とか無能とか彼には まったく 重要ではないのだ。たぶん。
(……説明して、納得してもらえるかなあ?)
 たどたどしくルルゥが口を開くたびに、周囲の少女たちの機嫌が(もともと穏やかではなかったけれど)ナナメになっていく……気がする! や、やっぱりぃぃぃ?!

 ゴゴゴゴゴゴ……

 こ、怖い。平穏ならざる効果音が――。
 地面は揺れ、風が吹いて、バチバチとどこからか稲妻まで迸っている。多様な種族が入り乱れている王宮だからこそ、攻撃の種類も多種多様だ。
(に、逃げなきゃ……)
 唐突に思い至り、周囲を見渡すけれど取り囲まれた状態では逃げ出すことも容易ではない。
「お、お願い。本当にムリなんです、許してください!」
 懇願するルルゥを、取り囲んでいた少女の一人が突き飛ばす。かなりの強い力で納戸の壁に激突した。
「――ッ!」
 い、痛い。
 瞬間、息をつめて、目の前に火花が散った。


「馬鹿にして!」

「キラ様に気に入られたからって、いい気になってんじゃないわよっ」

「独り占めしたいなら、そう素直に言えばいいでしょう? 卑怯だわ」

「ああ、もう! メンドクサイからこんな子消しちゃおうよー」


 口々に悪態をついた彼女たちは、怒鳴ったり嘲ったり笑ったりして最後にはとても不穏なことを当たり前みたいに口にした。
 激痛のせいか、地面に倒れたルルゥの五感は朦朧としていた。
 よく、見えないし。聞こえない。湿った土の感触と擦れた草の匂いが少しだけ、した。
(どうしよう、わたし……しんじゃうの?)
 脳裏に浮かんだのは、金に煌めく火炎の髪の彼のこと。
(最期に、一目だけでいい――会いたいよぅ。キラさま)
 意識を手放す間際に願いが届いたのか、思い描いた人物の声が響いた気がした。けれど、それはルルゥの知る彼のものより少し、冷たくて、ゾッとする類いの泣きたくなる声だった。

  >>>後編に続きます。

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