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裏表一体、日々のこと。
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音信不通で申し訳ありません。ふたたび!
 前回の投稿から、一ヶ月以上経過しました。梅雨も明けちゃって、近畿地方も夏ですね、夏!
 学生さんたちは、もう夏休み気分でしょう。うん、今のうち満喫しちゃってください。
 私も学生時代、もう少し弾けておけばよかったな……と思う今日この頃。

 って、ことで。
 前回の「小さき姫と~」のチサ視点だった話の、今回は「魔喰いの森~」の彼視点の話です。
 いつも、書く前にこんな感じ……という、大体の話の流れはあるんですが、書いてみるとたまーに彼女・彼のアイデンティティみたいなのが出て、予想外に個性があらわれることがあります。
 今回は、そんな話(笑)。
 そんな物騒な話になるつもりではなかったんですが、根が魔物なので少し過激らしいです。
 見た目が小動物な彼なだけに、キツ○リス(by,『風の谷のナウシカ』)感は否めない。

 以下、「魔喰いの森のお人好し」のその後、魔宮にて。











―― その後、魔宮にて。side,シエン ――

 がさごそ、がさごそ。
 自分の持ち物ではない宛がわれた部屋で、寝具を整え、心地の良い具合を探るのは先刻〔さきほど〕までの極限状態だった緊張をほぐすための自衛行為である。たぶん。
 巣作りをしてしまう悲しい性質〔さが〕に冷静な心の内ではため息を吐くけれど、不安は拭われない。
 だって、ここにはいるはずの「番い」がいない。
 探しに出れば、生まれてから滅多に接することのなかった至近距離にやけに友好的な少女が入ってきて、顔を覗きこまれた(怯えられて、遠巻きに見られることはよくある。柱の陰の淫魔族の少女の対応が、シエンにとって一般的)。
 ドクリ、と心臓が鳴って弾きそうになるのを抑える。
 人間だ! と、わかった。
 「番い」であるエリルから、ちゃんと聞いている。
 シエンと出会う前に求婚していたという吸血族がいま魔宮〔ここ〕に滞在していて、人間の「番い」も一緒に来ている、と。

 真っ赤に染まる、目の前が。

 不甲斐ない……「番い」のために尽くすのがシエンの役目だというのに、怖くて手を出せないなんて。
 きっと、エリルはあの少女に嫌な想いをした、だろう。
(僕が、報いを受けさせないとダメなのに。そしたら、エリルさまも喜んでくれるよね? でも、あんな小動物みたいな子触れないよ……加減が分からないもの)
「ああ、もう……僕って何も出来ないんだ。見放されたら、どうしよう」
 寝台の上で蹲〔うずくま〕り、めそめそしていたら扉が開け放たれ慈しむべき「番い」が姿を現した。
「エリル、さま」
 彼女はどんな場所でも、状況でも堂々としていて可愛い。
「聞いたぞ、シエン」
 何故か、少し機嫌の悪い様子の彼女にドギマギして、ハッとする。
 もしかして、僕の情けない体たらくをエリルは知っているのだろうか。がーん。
 なんてことだろう、世界の終わりがすぐそこに――。
「チサに会ったそうじゃな」
「……チサ?」
 聞いたこともない名前に首を傾げる。
「人間の幼女じゃ。と言っても、幼女なのは見た目だけで妾と年齢は近いらしいがの」
 幼女。やはり、あの女の子のことらしい。
 エリルさまと年齢が近いのか……人間って、よくわからないな。魔族とは根本的に年のとり方は違う、と聞いているのに魔族に近い年のとり方をしている。
「で、会ったのだろう?」
「……会いました」
「ふん。あの女には隠しておきたかったのにのぅ」

 お主のことは。

 残念じゃ、とばかりに眉を顰めて、悩ましげに息を吐く。



「……エリルさま、怒ってない?」
「怒る? 何のことじゃ?」
 怒るようなことをしたのか、と唇を尖らせる彼女にぷるぷると首を振る。
「し、してません。してない……けど、何もしなかったから。僕、怖くて。エリルさまのために一矢報いることもできなくて、ごめんなさい」
「ほほう、報復か。シエンの種族は面白いことを考えるのぅ」
 ホホホ、と美しく笑って、口角の両端をキュッと上げる。
「じゃが、無用じゃ。妾は傷ついてなどおらぬゆえ……お主がいるからの」
「僕が?」
 潤んだ大きな赤い目を瞬き、きょとんとする。
「妾の欲しいものは、すべて手に入れておる」
 純白の髪に指を差し込み梳かすと、エリルはシエンの頭を胸に抱き寄せた。豊満な胸の狭間に顔を埋めた彼は「ふぁ…ッ!」と耳まで赤くなり、しかし抗うことはしなかった。

 そして。

「寝心地のよさそうな 理想的な ベッドじゃのう、シエン」
 はしゃぐ彼女を寝台に組み敷くと、巣作りしたそこで積極的に応じた。

( だって、許せるワケないっ……! )

 他の雄〔おとこ〕の匂いをつけてくるなんて……と、シエンは無防備な「番い」に秘やかに腹を立てていたのだが、それに気づかれるのは――もう少しあとの話、である。

  >>>おわり。

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