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裏表一体、日々のこと。
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 音信不通で、失礼しました。
 しばらく、こんな感じに音信不通が続くかもしれませんが……ご了承ください。

 さて、そんな音信不通の合間に久方ぶりに「小さき姫と年の差侯爵」のその後、など書いてみました。
 その後、というよりは「魔喰いの森」と「魔王子とメイド」の混在シチュエーションでチサ視点です。魔界に行った先で、彼と会いました……小さな○の物語、っぽい雰囲気が流れていますが、○は始まりません(笑)。
 次の視点は、「魔喰いの森」の彼視点かなあ? と思っています。

 以下、「小さき姫と年の差侯爵」のその後、魔宮にて。
 侯爵がチラリとも出てこないので、同じ時系列で侯爵の側の話も書こうかなあ? と思っています。が、それはコチラの話の別視点が終わってからの予定です……(^^ゞ




―― その後、魔宮にて。 ――

 初めてその人に会ったのは、魔王が棲まうという王宮の薄暗い廊下だった。

「 あ っ 」

 一緒に歩いていたルルゥが急に立ち止まった。そのことに驚いて、その視線の先を追って黒い影を見る。
 その影は廊下の壁にそびえる高い窓から差し込んでくる淡い陽光に照らされて、フードを被った輪郭を露わにする。目深に被ったそれからは、表情どころか顔すらもはっきりとは見えなかった。
 けれど。
「ひっ!」
 隣に立つ淫魔のメイドが怯えたのは、すぐに分かった。
「え? えぇ?!」
 まるで、脱兎のごとく一番近い柱の物陰に身を潜めた彼女に戸惑い、影と彼女を交互に見比べた。
 な、なに? いま、なにが起こったの! も、もしかして、すっごく危険なアレなのっ?! 絶体絶命の 大 ピンチなのっっ? もっと早く、おーしーえーてーよー!! タイヘン! わたし、キースさまに最期の言葉を残してないわっ……この人がせっかちさんでなければ残せるかしら??
 だったらいいのに(切実)!!
「……ご、ごきげんよう」
 伊達に二十年生きてないわ、女は度胸よ。ここは社交界の陰口に立ち向かうべく培った幼女の微笑みで、切り抜けてみせるっ!
 庇護欲を掻き立てるあどけない微笑みは、自慢じゃないけど家族だけでなく、年下の令嬢達にまで有効なんだから(エッヘン)!
 影は、ぴくりとも動かない。って言うか、冒頭〔さっき〕から一歩も動いていないのだ。
 これって、俗に言う「三すくみ」じゃないの? 蛇と蛙とマングースの、ってちがうか。蛇と蛙となめくじ、だったわね。
 誰が蛇で、誰が蛙で、誰がなめくじかはご自由に!
「えーっと、どうしたらいいのかしら? ルルゥ、この方……どなたなの?」
 ひぅっ! と息を呑んだメイドは、戦々恐々と声を絞り出す。
「エリルさまの、番〔つが〕い……さまです。き、稀少種の魔族で……キャー! 消さないでっ!!」
 涙声で身を震わせるルルゥをよそに、チサは目を瞬いた。
「エリル、さまの?」
 まあぁぁぁぁあ!
「あなた、お名前は?」
 弾んで駆け寄ると、影は怯んだように一歩後ずさる。
 覗きこんだ向こうにある目は大きくて、鮮やかな紅……そして、淡い陽光に見えた髪は繊細な純白だった。視線を泳がせる彼は、人見知りの少女のようであり、思春期の少年のようでもある。途方に暮れた様子になんとなく昔飼っていたウサギを思い出して、(カワイイ)とつい撫でまわしたくなった。
 が、手を伸ばそうとした瞬間、彼はついに踵を返して去って行ってしまった。
(ざんねん……エリルさまってば、どうやって親しくなったのかしら?)
 多くは求めないが、出来れば撫でるくらいには仲良くなりたいなあ……と、あらゆる方面に嫌な顔をされそうなことをチサは真剣に願う。
「はぁ、はぁ……チサさま、流石です。あの方を撃退なさるなんて……助かりました」
「撃退、なんてしてないけど……そんなに危険なの?」
「ええ、魔族にとっては……彼〔か〕の種族の力は聖なる力に近くて、テリトリーに嵌まれば消滅されかねませんので」
 特に、ルルゥのような最弱の魔力しか持たない個体はひとたまりもないらしい。相手の意思にかかわらず消されることも偶〔たま〕にあるそうだ。怖いわね。
「見てください、髪が縮れてしまいました! ひどいっ」
 と言って、赤いうねうねと捻れた髪を見せるが……正直、縮れているのか、ただの癖毛なのかが分からなかった。ゴメンね、ルルゥ。

 走り去った闇の向こうを眺め、(また、会えるといいな)などと暢気に考えていることにも淫魔のメイドに対しては悪いことのように思えて――心の中で 多めに 謝っておいた。

  >>>おわり。

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