背徳の姫君。鳴海広之。1

　「背徳」番外の彼視点、第一回。
　背徳なだけに、表の顔と裏の顔をもつ関係……を心持ち強くしております。ゆえに、本当はかなりの純情青年だったハズのこの人も、なんか曲者になりつつあります。
　クラス委員長であり、生徒会の構成員でもある人ですので、会長や書記と面識は勿論あります。つーか、書記殿とはクラスメートですので（笑）。
　んー、なんつーか、この彼と真鍋氏との会話は聞いてたら怖いかもしれないです。なんとなく。
　真鍋氏はあんまり、相手にしなさそうですが……売られた喧嘩は、常に買う人ですからねえ（遠い目）。

　この鳴海くんには、一応、基本としたタイプがあります。
　クラスの中の中心人物で、万人に優しく……しかし、愛情表現は小学生並というのが、ポイントです。
　振り回される彼女がちと、哀れですなー。

　以下、「背徳の姫君」番外視点、鳴海広之1。
　明日、「陽だまり」更新しますー。

――　背徳の姫君。～鳴海広之1～　――

　放課後の教室を出て、扉を閉める。
（なに、やってるんだ？　俺は）
　鳴海広之〔なるみ　ひろゆき〕は無意識に火照〔ほて〕る頬をそ知らぬ顔で誤魔化して、チラリと後方の扉の向こうにいる彼女、山辺志穂〔やまべ　しほ〕を思った。


　特に、特別な感情をもったことはない……隣の家の彼女のことを。


　　　　　***　***


　引っ越しの挨拶をしに、家族と一緒にうかがった彼女の家の玄関先で、志穂は母親の影に隠れるような引っ込み思案な女の子だった。
　大人しい、というか。地味で目立たないし、自己主張もしなければ決断力もない。
　答えに困れば、すぐにカーテンの中に隠れる……どちらかと言うと、癪に障る女の子。
　イライラする――人付き合いの苦手な彼女は、よほどの親しい友人でなければ、溶けこまない。相手が男なら、なおさら。
『毎日、こんな遠くから見つめるくらいなら、告白でもなんでもしてくればいいんだよ』
　そんな彼女が、男を好きになるなんてあり得ない。
『でき、ないよ。そんなこと……』
　告白して、サッサと気づけばいいんだ、と心中で舌打ちした。が、告白〔それ〕さえも彼女には無理だろうと半ば達観した予想を、広之は立てていたのだ。
　彼の予想は、ものの見事に覆されたけれど……一念発起した彼女と真鍋耀〔なまべ　よう〕が付き合うことになったのは驚きだった。

　　>>>続きます。