放課後小話―背徳の姫君・番外―

　ここ最近、何故か「背徳の姫君」本編の魔属性にお言葉をいただきます。が、そのネタがあまりないので……書きやすい番外の二人から、小話書いてみました。
　このネタで、本編の魔属性二人にも何か動きがあればいいですが（遠い目）。
　しかし、魔属性二人は表立ってラブラブになるとかありえないし。
　……深く考えないことにします。
　放課後ネタなら、なんでもいいのさ。はっはっはっ！

　以下、「放課後小話」背徳・番外の委員長視点でいきます！
　季節は夏の前、高校三年の７月くらいかなー？

放課後小話――背徳の姫君・番外――

　放課後、教室に戻った鳴海広之〔なるみ　ひろゆき〕はそこに数人のクラスメートの姿を見つけた。
　彼らは雑誌やビデオのやり取りをしているらしく、自分の入手したそれがどれだけイイかという説明を笑いながら交わしている。
　入り口の扉を手で叩いて、自身の存在を知らせると広之は冷ややかに彼らを見遣った。
「そろそろ、下校時刻だよ」
「鳴海！」
「委員長っ」
　と、彼らはそのいかがわしい代物を慌てて隠すのも格好悪い、とでも思ったのか、あえて繕うように笑って広之を出迎えた。
「委員長も、おひとつどうよ？」
　勿論、健康な男なら興味がないワケはない。盛りのついた年頃ならなおさら……だが、この手の話題に広之が興味を持つことは少ない。
　少し前なら、多少付き合いはしたが、今は生身の 彼女 がいるから必要なかった。
　にっこり笑って、
「没収されたいなら、貰うけど？」
　ついでに、先生に一言付け加えてやる、と広之は心の中で思った。
　その委員長の一言に、チェーと彼らは没収されまいと早々に鞄に仕舞って、面白くないと広之を睨む。
「鳴海には、山辺がいるかあ？」
「まあなあ、可愛くないワケじゃないけど……一組の京香ちゃんや五組のエリちゃん、一年の真世ちゃんをふったのはもったいないぞー」
「言えてるー」
　ふるくらいなら俺に分けろ、とばかりに執拗に絡んでくる。
「どんだけマニアックなんだよ、委員長」
「はいはい、志穂のいいトコロは俺だけ知ってればいいんだよ。おまえらも絡むくらいなら、早く彼女つくれよ」
「ひっでー」
「つくれるなら、つくってるつーの！」
　ぶーぶー、と文句を言いながらも、教室から出て行く。

（やれやれ）

　と、広之は息をつき、教室の隅で揺れるカーテンに目をつけた。
　やっぱり、と言うか、なんと言うか。
「志穂、大丈夫？」
　ビク、と震えて、カーテンの中から真っ赤になった山辺志穂〔やまべ　しほ〕が顔を出した。
　放課後、役員の会議で遅くなる広之を教室で待っていた彼女は、どやどやとやってきた彼らに怯えて（隠れなくてもいいのに）慌てて身を隠したのだろう。
　すぐに帰るだろう、と思った相手は立ち去らず、こともあろうに彼女には 少々 刺激の強い話をし始めた。
　出るに出られず、耳を塞ぎ、カーテンの中で震えていた……というワケだ。
「な、鳴海くん？」
　涙目で広之を仰ぐ。
「バレなくてよかったね」
　バレていたら、いい餌食になっていただろう。志穂は彼らが からかう にはちょうどいい 相手 だ。
　……考えただけで、ゾッとするな。
「でも、今度からは隠れないほうがいいよ」
　俺がどうにかなってしまう、という言葉を呑みこんで、広之は志穂に言い聞かせた。
「う、うん……びっくりした」
　気が気じゃない彼の 思惑 など知らない様子で彼女は頷き、呆然と呟いた。

　　>>>おわり。