裏表一体、日々のこと。
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かなりめずらしい番外ですが、「帝国秘話」の「小さき花」から過去の小話を書きました。
つい先日、「小さき花」の続きに関してお言葉をいただいたのですが……なかなかご希望にそえない不甲斐ない現状がありますので(^^ゞ
罪滅ぼし程度に、小話です。
ダフネリアの幼少の頃の、小話です。
「小さき花」からうかがわれる彼女のイメージとは、多少違うと思われるかもしれませんが!
私のイメージからは、結構ピッタリですよ。
たぶん、このあと、彼からイロイロ教育されたんだと思います。手厳しく(笑)。
つい先日、「小さき花」の続きに関してお言葉をいただいたのですが……なかなかご希望にそえない不甲斐ない現状がありますので(^^ゞ
罪滅ぼし程度に、小話です。
ダフネリアの幼少の頃の、小話です。
「小さき花」からうかがわれる彼女のイメージとは、多少違うと思われるかもしれませんが!
私のイメージからは、結構ピッタリですよ。
たぶん、このあと、彼からイロイロ教育されたんだと思います。手厳しく(笑)。
―― 小さき花 ~α.むかしむかし~ ――
イフリア帝国、司法の「癒し」を司るアルテア家の庭園には広い花畑がある。本来、貴族の屋敷の庭園と言えば、バラだとかユリだとかやたらと手間のかかる女王のような花ばかりというイメージだ。
けれど、この貴族の邸宅の庭園はまさしく「花畑」だった。
こじんまりとした野花が植えられ、人が歩くための整備された道はない。
「にいさまー!」
その花畑を駆け上がる一人の少女は、この屋敷の娘だった。
先を行くアルテア家の嫡男であるデルハナースを追いかけ、整備されていない花畑のでこぼこに足を引っかけるとこけた。
やわらかな土と、その上に鬱蒼としげる草花のおかげでそれほどの痛みはないはずだ。
が。
「にぃーさまーのーバカぁ!」
わぁ、と派手に泣いて、置いてけぼりにした兄を責めたてた。
アルテア家の一人娘として、蝶よ花よと育てられた彼女はそれなりにワガママに育った貴族の姫だ。
少し年の離れた兄も、言葉少なではあったが、妹にはすこぶる甘い。
「ダフネリア、ごめん」
彼女の泥のついた服を丁寧に払い、抱き上げると泣き止むまで付き合ってくれる。
「にぃさま、にどとダフネリアをのけモノにしないでね」
「うん」
「ゼッタイよっ」
「わかった」
幼い妹に高飛車に命令されても、兄は怒らなかった。無表情にコクリ、と 素直に 頷いた。
司法を司る貴族には、「癒し」を司るアルテア家とともに「裁き」を司るトラドゥーラ家があった。
ダフネリアの兄が士官学校に入学する頃、そのトラドゥーラ家の嫡男と交流を深めるようになり……頻繁に互いの家を行き来するようになった。
もともと、父親同士は仕事仲間だから生まれた頃から顔くらいは合わせていたのだが、遊ぶようになったのはこの頃からだ。
除け者にされるのが大嫌いな お姫さま 気質の お嬢さま だったダフネリアは、兄にくっついて 彼 とよく遊んでいた。
いや。
遊ぶ、というには少し趣が違うかもしれない。
「ダフネリア!」
心配そうに木の上で動けなくなった妹を見上げるデルハナースを、トラドゥーラ家の一人息子は「ほっとけよ」と嘲笑するかのように諌める。
「 自業自得 だよ」
意味はよく分からなかったが、馬鹿にされたのはなんとなく分かる。
木漏れ日のような栗色の髪と、甘い亜麻色の瞳のトラドゥーラ家のアルザスは、その姿だけを見れば「天使のような」という形容詞がよく似合う少年だった。
父も兄も自分も黒い髪をしているから、ダフネリアは一目で彼の色が好きになった。こんな天使みたいなご様子なら、きっとすごく優しいに違いない。
そう、思った。
なのに。
「自分で下りることもできないのに、真似するなんて……デルの妹って、バカなんじゃない?」
現実の彼は、容赦がなかった。
蝶よ花よと育てられたダフネリアのプライドは、ズタズタのコナゴナになって悔しくて悔しくて絶対に泣くもんか! と唇を噛んだ。
さわさわと風が、木の葉を揺らしてさらさらと音を立てる。
「バカ、じゃないもん! じ、じぶんでおりれるものっ」
それまで、泣けば誰かが手を差し伸べてくれた。
だから、自分で解決する方法なんて知らなくても平気だった。
下を見たら、足が竦む。
けれど。
木の幹に手をかけて、じりじりと体をいっぱいに広げて下にずらしていく。
がくん、と体が宙に浮いて、何が起きたか分からないままドスンと落ちた。
「たーっ!」
一番、下になったアルザスが恨めしそうに呻く。そして、ダフネリアを腕でキャッチして倒れこんだデルハナースは無表情ながら真っ青だった。
「……痛いところは、ない?」
「…………わぁー!」
と、ダフネリアは目を見開いて仰いだ。
自分がいた枝が、はるか上方にある。
「すごい、すごい。ひとりでおりれたよ? にぃさまっ」
「……そう」
手を叩いて喜ぶ妹に、かなり困惑したような情けない無表情で兄が頷いた。
「無事なら、いいんだ」
「いや、そうとうヤバイだろ? おまえの妹……ほっといたら危険だって」
地面に這いつくばって発せられたアルザスの(正当な)台詞に、コクリとデルハナースは素直に肯定した。
「うん、だから一緒にいるんだ」
やれやれ、とアルザスは呆れて、「まあ、いいけど」とニコニコと上機嫌のアルテア家のお姫さまにペシンと一発、腹立ち紛れに額を叩〔はた〕いてやって――立ち上がった。
>>>fin.
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