裏表一体、日々のこと。
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しとしとと長雨の続く、夕暮れの頃だった。
「父さま」
和宮緋里〔かずみや ひさと〕は幼い手で父親の袖を引っ張って、路上に止まっている今はまだ珍しい車という乗り物に乗って、その窓の向こうに見えた人影……と言っていいのか? は分からない姿に首を傾げた。
暮れはじめた路上は暗く、点在する街灯の灯篭の頼りない光が揺らめいてその影を映す。
彼女の見たことのない色をした、キレイな髪が雨に濡れてキラキラと輝いていた。
最近、彼女の父親が異国の種だというスラリとしたラインの猫を連れ帰って来たが……その雰囲気によく似ている。
ぐっしょりと濡れたそのスラリとした体は、今にも倒れそうに左右に大きく傾いて、人の気配に気づいたのか緋里の方を向いた。
ガラス細工のような眼差しは、緋里の知る人間の色をしていなかった。
蜂蜜のような、金色。
おとぎ話に出てくる鬼、も確かそんな色だと描かれているはずだが……こんなキレイな鬼ならば攫われてもいいかもしれない、と緋里は思った。
鬼は緋里には分からない言葉を悲痛に叫んで、倒れた。
「父さま! 鬼がっ」
死んでしまった! そう騒ぎ立てる娘を「そうではない」と宥めながら父親はぐったりとなった影を抱き起こし、悩ましげに息をつく。
「どうしてこんなところに異国の子どもが? ……しかし、どこの子息にしろ丁重に扱わねばならんだろうな」
雨に濡れて冷たくなった体を毛布でくるんで、ふと胸に光るペンダントに目を細めた。
「エル?」
「なぁに? それ」
ぴょこん、と興味津々と覗き込んだ緋里に父親は鎖についた平べったい金属を見せる。
緋里の見たことのない記号が、示されていた。
彼女はその一番大きな文字を指でなぞる。
「それは、異国の文字で「エル」と読む。緋里」
「える?」
彼女の父親は鬼の名前を正しく教えてくれたが、緋里には難しくて覚えられなかった。
だから、彼女は鬼の名前を「える」と記憶した。
>>>続きます。
これは、「みちつくの庭」のサイドストーリーです。まだ名前しか出ていない「ひーさま」こと和宮緋里の幼少期の話です。
彼女が奏江や真広に出会うのは、これより少しあと……の予定です。奏江とはもしかすると、多少面識があるかもしれませんが。
だって、生まれた頃からの許婚ですヨ(^^ゞ。
それはそれとして、彼女の性格付けになればいいなと思って考えてみました。過去話……鬼つながりで!
和宮のお家は、外交官とかそんな家柄じゃないかなーと勝手に思ってます。時代背景は、なんちゃって大正時代です。テキトーです。
路上は馬車がガラガラ行き交っている時代です。その中、この和宮家だけ車! のつもり。
ちなみに、エルの名前は「リック・ハウンエル」なのでした。
綴り、考えなしで決めたけど、まあいいか。
「父さま」
和宮緋里〔かずみや ひさと〕は幼い手で父親の袖を引っ張って、路上に止まっている今はまだ珍しい車という乗り物に乗って、その窓の向こうに見えた人影……と言っていいのか? は分からない姿に首を傾げた。
暮れはじめた路上は暗く、点在する街灯の灯篭の頼りない光が揺らめいてその影を映す。
彼女の見たことのない色をした、キレイな髪が雨に濡れてキラキラと輝いていた。
最近、彼女の父親が異国の種だというスラリとしたラインの猫を連れ帰って来たが……その雰囲気によく似ている。
ぐっしょりと濡れたそのスラリとした体は、今にも倒れそうに左右に大きく傾いて、人の気配に気づいたのか緋里の方を向いた。
ガラス細工のような眼差しは、緋里の知る人間の色をしていなかった。
蜂蜜のような、金色。
おとぎ話に出てくる鬼、も確かそんな色だと描かれているはずだが……こんなキレイな鬼ならば攫われてもいいかもしれない、と緋里は思った。
鬼は緋里には分からない言葉を悲痛に叫んで、倒れた。
「父さま! 鬼がっ」
死んでしまった! そう騒ぎ立てる娘を「そうではない」と宥めながら父親はぐったりとなった影を抱き起こし、悩ましげに息をつく。
「どうしてこんなところに異国の子どもが? ……しかし、どこの子息にしろ丁重に扱わねばならんだろうな」
雨に濡れて冷たくなった体を毛布でくるんで、ふと胸に光るペンダントに目を細めた。
「エル?」
「なぁに? それ」
ぴょこん、と興味津々と覗き込んだ緋里に父親は鎖についた平べったい金属を見せる。
緋里の見たことのない記号が、示されていた。
彼女はその一番大きな文字を指でなぞる。
「それは、異国の文字で「エル」と読む。緋里」
「える?」
彼女の父親は鬼の名前を正しく教えてくれたが、緋里には難しくて覚えられなかった。
だから、彼女は鬼の名前を「える」と記憶した。
>>>続きます。
これは、「みちつくの庭」のサイドストーリーです。まだ名前しか出ていない「ひーさま」こと和宮緋里の幼少期の話です。
彼女が奏江や真広に出会うのは、これより少しあと……の予定です。奏江とはもしかすると、多少面識があるかもしれませんが。
だって、生まれた頃からの許婚ですヨ(^^ゞ。
それはそれとして、彼女の性格付けになればいいなと思って考えてみました。過去話……鬼つながりで!
和宮のお家は、外交官とかそんな家柄じゃないかなーと勝手に思ってます。時代背景は、なんちゃって大正時代です。テキトーです。
路上は馬車がガラガラ行き交っている時代です。その中、この和宮家だけ車! のつもり。
ちなみに、エルの名前は「リック・ハウンエル」なのでした。
綴り、考えなしで決めたけど、まあいいか。
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そうなんです。
許婚登場です。私めも真広の幸せを願っております。
ひーさまは、どういうお嬢さまなんだろなー? というのを、固めるために書いてます……真広の幸せはこのお嬢さんにかかっている、と言っても過言ではありません(笑)。
一応、イメージはあるんですけどね。その通りに形成されるかは……書いてみないとワカリマセン! どうぞ、無事に形成されることを祈ってやってください(^^ゞ
ひーさまは、どういうお嬢さまなんだろなー? というのを、固めるために書いてます……真広の幸せはこのお嬢さんにかかっている、と言っても過言ではありません(笑)。
一応、イメージはあるんですけどね。その通りに形成されるかは……書いてみないとワカリマセン! どうぞ、無事に形成されることを祈ってやってください(^^ゞ
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たぶん、そのうち無色。
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主に恋愛小説の執筆ととめどない落書き。あと、HP運営。
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恋愛小説やら絵やら書いて、裏と表のHPを運営中。ココでは日々のこと、本編の番外か先行掲載を目的にツラツラ生息していこうかと思っています。
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