バレンタイン・ミッション1

　バレンタイン企画、というほどではありません。
　なんとなく初々しい話を目標に、コンセプトとして片想いを持ってきてみました。
　今までに書いたことのない設定、で王道です（笑）。
　今日は「女の子」側からの話です。
　近いうちに「男の子」側も書く予定です。
　わたくしの好きな設定で……「甘党」の男の子と「作るの好き」な女の子の一方通行ラブにしてみました。
　冒頭のフレーズ、某マメ○が頭に浮かびます。
　なんかのマンガで読んだのか、あるいは高校時代くらいに社会の先生が言っていたのか（たぶん前者が濃厚）のマメ知識です。
　本当かどうかは、未確認ですが……そう言われれば納得しそうです。
　あ～、そうなんだ！

　以降、「バレンタイン・ミッション」女の子の気持ち。
　名前、ギリギリまでナシでいけないかと頑張りましたが……断念しました。
　主人公の女の子の苗字は、最初からあったんだけど。
　出来れば、彼・彼女で通したかった！　そんな話です。

――　バレンタイン・ミッション～女の子の気持ち～　――

　ねぇ、知ってる？
　チョコレートには、媚薬が入ってるんだって。

　帝都浦川高校の調理室で、２月１３日の放課後は女の子たちだけで集まって秘密（と言っても、もう毎年恒例になってるみたい？　だけどね）のチョコレート作り。
　調理部が講師をつとめて、クラスで配る義理チョコに紛れて本命チョコの指南なんかをしていたり、甘い香りが調理室に漂うと恋する女の子の顔はみんな真剣になる。
　いつもは放課後になると、グラウンドでハードルを軽々と飛び越えていく俊足の陸上部の彼女も真面目な顔で湯煎したチョコレートに砕いたナッツを入れて、慎重に型に流し込む。
　長身でショートカットの彼女だけれど、可愛いと思った。
「江美は、誰かに作らないの？」
　チョコレートを無事に型に流し込んだ友人が緊張を解いて、指南役をしていた調理部員の自分に話をふってきたから戸惑った。
　いないことはないけれど……まだ、迷っている。
「よく、甘党のアイツにあげてるじゃない？」
「……んー？　でも、明日はわたしが作らなくてもたくさん貰いそうでしょ？　高橋くんなら」
「まぁねー、昔からいっぱい貰ってたけどさー？　アイツ、甘党だし。こういうイベントには 超 疎かったから、モテるクセに気づいてなかったわ」
　だから、いまだに彼女ナシなのよね……と可笑しそうに笑う。
「……それだけじゃない、と思うけど」
　と、小さく呟いて、「ん？」と不思議そうに顔を向けてくる彼女に何でもないと首を振る。

　そうだ、彼には好きな子がいる。
　だから、作ろうか……迷っているのだ。

　型に入ったチョコレートを冷蔵庫に入れて、戻ってきた木下明菜〔きのした　あきな〕の上機嫌の顔を見て、倉橋江美〔くらはし　えみ〕は笑ってしまった。
　彼が好きになるのも仕方ない、と思う。
「笹原くん、喜んでくれるといいね」
「うん。付き合って一年目の記念日、だしね！」
　満面の笑顔を向けて、明菜は頷いた。
　少し女の子としては長身の彼女と、バスケ部員としては小柄な彼とはすれ違いが絶えないけれど……それは、仲の良さの裏返しで本当に好きなんだなと思う。

　明日、顔のわりに不器用な彼はまた……好きな子が別の人にチョコレートをあげるのを見るのだろうか？
「俺、チョコが一等好きなんだよね」
　と、笑っていた彼の顔を思い出して、だったらあげるのも……悪くないんじゃないか……って、思った。

　　>>>続きます。