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裏表一体、日々のこと。
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 今日(日付的には昨日)、私の頭の中で展開した話をメモしております。
 初めは、美人な彼女とのほほんとした彼の会話から始まったモノです。
 そして、彼女に何気なく差し出す場面とか……彼女が意地っ張りすぎて全然話が進まない(なぜなら、彼は受身なので彼女が動かないと友達枠からまったく動かない!)とかの場面が楽しそうだなと思ったので書いてみました。
 オフィスものなので、例のごとく「龍の血族」関連で……まあ、こういう回りくどい話もいいんじゃないかと。
 彼女の意地っ張り加減で、五年越しくらいの話になる気がします(笑)。

 以下、「意地っ張りな彼女」みたいなタイトルが似合うと思うんですが、未定の第一回。
 フロッピーを久しぶりに開けたら、「一文字シスターズ」で何か短編を書こうとしていた形跡を発見しました。
 でも、何を書こうとしていたのか、まったく覚えてません。
 って、コトでタイトルと冒頭の一行はその名残りです(^^ゞ
 二回目があるとしたら、今度は彼女視点でやりたいな……と思っています。



―― Spring trick。1 ――

 それは、めずらしく彼と彼女の恋物語が進展した日のことだった――。


 その日はしとしとと梅雨のような雨が降っていて、残業決定だった水野陽平〔みずの ようへい〕は夕食と夜食になる食料をコンビニで調達して会社に戻るところだった。
 いよいよ本降りか、と思わせる大きな雨粒が傘を派手に鳴らした。
「どうしてっ」
 女性のヒステリックな声が響いて、パシャと水溜りを蹴る足音、低い男の答えは聞き取れなかったけれど……雰囲気は修羅場だ。
 変な場面に居合わせたな、と内心水野はのほほんとした顔で苦く思う。
 このまま歩いていけば、鉢合わせは必至だが……会社に戻るには、どうしてもこの道を通過しなければならない。
「彼女よりわたしの方が美人だし、貴方に似合っているでしょう?」
 彼女の高飛車な、けれど声だけ聞いている水野には縋るように聞こえた。
 相手の男(たぶん)は、鼻で笑ったようだった。
「悪いけど、性格の悪い女とは付き合えない」
 と、なかなかに辛辣な言葉だ。
 いくら嫌いでも、ここまで好意を示してくれた女性に言うだろうか?
 疑問に思っていると、向こう側から歩いてきた男とすれ違い……相手と気まずい視線を交わして、軽く会釈する。
(……まさか、彼がそんなにハッキリとした振り方をするなんて)
 社内で顔くらいは知っている男だったが、二枚目で女性には紳士的だと定評があったはずだ。もちろん、女性社員からの人気も高い。
 よく言えばフェミニスト、悪く言えば優柔不断だろうか?
 修羅場も終わったようだし、と足を向けると雨の中に女性が傘もささずに立っていた。
 曇天の空をキッと睨んで……唇を噛んでいる。
「………」
 水野は彼女を知っていた。とは言っても、噂だけで実際に話したことはない。
 今年入った新人で、確か叶野鈴子〔かのう すずこ〕と言ったはずだ。スラリとした手足と女性らしい曲線はモデル並で容貌も文句なしに美しい。
 入社した当時は、綺麗な子が総務部に入ったと社内で騒然となった。
 ただ、そのすぐあとに尋常じゃない数の男性社員と浮名を流して、しかも振ったとか振られたとか修羅場になったとかとにかくその手の噂に事欠かないと聞いている。確かに、これくらい美人で言い寄る男に困ることのない女性なら奔放にもなるだろう。
 夜の真っ暗な虚空を睨んでいた彼女が、不意に水野をとらえて「何よ、アンタ」と長い髪をかきあげる。
 上から下まで、ずぶ濡れなのにその仕草はなんだかやっぱりモデルのようだった。
「えーっと、ああ、これ食べる?」
 水野は手に持っていたコンビニの袋の中身を思い出して、差し出した。
 食後のデザートに、と思って買っていたスイートだ。
「スイートポテト、疲れてる時は甘いものが欲しくなるよな」
 そのあと、彼女はその綺麗な顔をなんとも言えない表情に変えて「そうね、食べてあげてもいいわよ」と胸を張った。



 それから、三年。
 水野陽平と叶野鈴子は相談される側とする側という関係だ。
 「また、振られたのか?」と水野が問えば、鈴子は「うるさいわね」と睨んで、「あんな男、わたしには相応しくなかっただけ……肝の小さい 下らない 男だったわ」と言い放つ。
「ねえ、水野。合コンやらない? いい男紹介してよ、竜崎さんだったら一番いいんだけど」
「不倫はダメだろ、不倫は」
「何よ、ツマンナイ男ね!」
 略奪愛上等じゃないの、とばかりに鈴子は水野を大きな潤んだ瞳で見上げてくる。
「いい男ねえ、見てくれってそんなに重要か? 俺からすれば、叶野には 寛容な 男が似合いだと思うんだが」
「だ、か、ら! 寛容な いい男 を紹介しなさいって言うのよ。バカね」
「まあ、探してみるけど」
 そんな都合のいい男がどこにいるんだろう、と水野は肩を竦めた。

  >>>続きます。

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