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裏表一体、日々のこと。
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 高伊奏江〔たかい かなえ〕は、ムッツリと憮然とした表情で……ベッドの上の、真広〔まさひろ〕を見た。
 小学校の保健室にかかった、レースの装飾がついた白いカーテンが翻る。
(……まったく、先が思いやられる)
 と、息をつく。
 これでは、どちらが護衛なのだか――。



「 三春真広〔みはる まさひろ〕です 」

 私立の金持ちの子息ばかりが通う小学校の教壇の横に立った、少年がぺこりと頭を下げた。
 高伊の主人である、奏江の父・清信〔きよのぶ〕が世間知らずだと言う真広を慮〔おもんばか〕って……ついでに奏江の身辺警護にもなると、同じ学校に通わせることになったのだ。
 庶民の匂いはしないが、だからといってごく 一般的な 常識をすら 理解 していない 真広 である。
 当初から、奏江は危惧していた。
 胡乱な眼差しでおあつらえむきに隣の席を準備された少年へと顔を向ける。
 童子の水干姿こそやめて、ブラウスにブレザーという洋服に袖を通した彼はきょとんとした表情で短く切り揃えられた黒髪から、目をくるりと動かした。
「どうしました?」
「三春、という苗字だったのか……と思ってな?」
 ああ、と笑って、真広は答える。
「私たちに苗字はありませぬ……三春は便宜上、あったほうがいいとの姉上の考えで、適当に」
「適当って……」
 (おいおい)と心の中で一人つっこみ、奏江はしかし(らしいよなあ)と肘をつく。
 ふぅ、と息をついたのは真広の方だった。

「どうした?」
「いえ、人が多いところには慣れていなくて……学校というところは、なんと申しましょうか……人が多くて、明るいのに暗い……気をつけなくては、姉上に叱られてしまう」
 めずらしく神妙に真広が情けない顔で嘆いたので、奏江は眉を上げて「へぇ」と内容とは まったく 違うところで、興味深く相槌を打った。

  >>>やくそく1。終了。
 思いついて、続きを書いてみる「つき と おに」の続編です。
 カテゴリーもこうなったら作らないと! と思ったので、急遽考えて……仮題ではありますが、作りました。
 「みちつくの庭」。
 意味は造語というか(^^ゞ。
 「満ちる心 尽きるまで」という気持ちをこめて「みちつく」という言葉にしております。
 「みちつき」=「満ち月」という手もあったけど。
 コチラの話のテーマは、「気持ち」の方なので……そこまで、書くには長い時間がかかりそうです。

 なぜ、いきなりまた書く気になったかと言うと。
 LaLsコミックの『執事様のお気に入り』一巻を読んだからです。
 奏江さまの世話を焼く真広、の姿が目に浮かびました。「やくそく」の中で考えているエピソードは結構、たくさんです。
 アレしてー、コレいってー、最後はこう! みたいな軸はできてるんですね……上手く運べたらいいんですが。

 なかなか恋愛に進まないところが、個人的にはツボだったりします。

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 ぐるり、と茶室を見渡した真広〔まさひろ〕は、奏江〔かなえ〕のほうにふたたび向き直ると ふわり と笑った。
「よい、茶室ですね」
 その指に赤い布を握りしめた奏江は、フイとその見透かすような静かな童子から目をそらして「まあな」と答えた。
 つれない返事のように演じながら、その心中や、案外に悪い気はしていない。
 ふっ、と唇を緩めると目を遠くを見遣るように細める。
「母上が、お好きだったのだ。ここにある茶器はほとんど母上が選んだものゆえ……っ」
 思い出すと、すぐそこに母の姿が浮かぶ。
 赤い布が、はらりと手から滑って畳に落ちる。
 拾おうと思うのに、視界は涙が邪魔をしてほとんど歪んで見えない。
 代わりに、すぐそばにいた彼が屈んでそれを拾った。
「これは?」
「母上の……大切にされていた、ふくさだ。病床に入ってからは、ここに来ることもままならなくなった、から……そればかり、触っておられた……」
「そうですか」
 不意にこぼれた涙を見せまいと、彼から顔を背けていた奏江には真広の表情をうかがい知ることはできなかった。
 つい、と注意深く赤い艶のある布を眺めると、口だけで言葉を紡いでフッと息を優しく吹きかける。
 さりげなく、それを奏江へと返すと、「大切に」と握らせた。

「人は死んでも、いなくなるワケではございません。大切に想えば、残る……どういう形であれ、存在しつづけるものです」

「そうだろうか……母上は」
 ぐい、と袖口で涙を拭った少年は、丸い窓の格子から外を眺めた。
「生き返らない、のであろう?」
「はい」
 それが、世の理〔ことわり〕。
「僕が 願った せいだ。母上が病気ならいいと……そばにいてほしいと邪〔よこしま〕なことを考えた。母上はきっと、僕を恨んでいる」
「そんなことは、ありませぬ」
 静かに背中からの声が言って、キッパリと否定した。
「ここには、夜江子様の慈愛が溢れております。庭も屋敷も、この部屋の茶器まで……お気づきになられませんか?」

「……そうなら、いいとは思う」

 だが、奏江に感じられるのは母を失った虚無感だけだった。
「いいえ。そうだと、信じてください。母親が子どもを愛さないわけがない……疑うなど、母親が一番 悲しむ ことでございます」
「おまえに 何が 分かる?」
「何も――ただ、昨夜の鬼の 正体 がわかりました」



 月をただ仰ぐ哀れな 子鬼 。
 掻き消える瞬間まで、届くはずのないそれに母の面影を重ねていたのかも、しれない……。

  >>>つき と おに(冒頭5)。メモ終了。
 とりあえず、冒頭はここまで。
 まだ、イロイロ秘めたことがあるのですが……それはまた、次の機会に。
 ちなみに、まだまだ子ども時代続きます。子ども、と言っても10歳前後だと思うんだけど。
 にしては、喋り口調がジジくさい(←こらこら)。

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 日本の古くからの庭園と、西洋の花々が彩る空間とが混在するようなところだった。
 芝生と木が整然と並んで、小高い山をつくり、その裾野に石で囲われた立派な池がある。
 池には小さな庵の建てられた中州があり、石の橋を渡って行くことができる。屋敷に客人を迎えるようなことがあれば、ここで華やかな会が催されるのだろう。



「奏江〔かなえ〕様」

 真広が茶室の小さな扉をくぐると、そこにいた彼はビクリと背中をふるわせた。
「な、にしに来た」
 涙に声をふるわせながら、彼は毅然と睨む。
「おまえなんか 嫌い だ」
「それなら、それで構いませぬ」
 と、怯むことなく告げると、履物を脱いで中に入る。
「奏江様がどのように思われても、友だちなら心配するものなのでしょう?」
「……友だち?」
 奏江は目の前の水干姿の童子が発したひどく 、簡単な 単語だが 理解に苦しむ 言葉に怪訝に問う。
「誰と誰が?」
「奏江様と私が、です」
「……待て待て!」
 慌てて押しとどめる。
 真広は不思議そうな顔をした。
「いったい、いつ、どこから、そうなったんだ?!」
「? 旦那様がそう仰られましたが? ご不満でも?」
「おお アリ だっ!」
 大きな声で不満を露にし、彼は「友だちとは、そういうものではない」と否定した。
「そうなのですか? では、どうすれば 友だち となれるのですか?」
 やけに、真面目に訊くので奏江は困惑した。
「友達とは、決められてなるものではない。お互いになりたい、と思わねば……あとは、相手をよく知り、時には喧嘩をしてでも間違いを正すことも必要だ」
 むっつりと、告げる。本当は自分にもよくは分かっていないのだが。
「わかりました。奏江様、貴方様に 友だち になっていただけるように 私が 働けばよいのですね?」
 にっこり、と笑った無邪気な顔に、さらに奏江は渋面になった。

「……そういう、のとは微妙に ちがう と思うが」

 ぐるり、と首を巡らせる水干姿の背中を見つめて、奏江は手のひらをギュッと握りしめた。

  >>>つき と おに(冒頭4)。メモ終了。
 今回で冒頭部終わりまでいこうとしたのですが、到達できず。
 無念なり。次こそ、冒頭最後に届くハズ!

 さて。
 話とは関係ありませんが、本日コバルトの発売日でした。
 ……お気に入りのシリーズが二冊も出るとあって、確認(笑)に本屋まで行って来たのですが――一冊は、なんかどうしましょう展開でした。
 まあ、シリーズとして進んでいくにあたり、こういう展開になるだろうという予想はしてたんですが。
 にしても、ですね。
 今回の巻だけで読むのはツラそうなので、次の巻が出てから読もうかと思っています。ははっ、買ったには買ったのですけどね。
 もう一冊の方は、まだ買ってないの。
 明日、会社の帰りに買おうと思ってます。でないと、ポイントがたまらない(←セコイ)。

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 促されるままに部屋をあとにした真広〔まさひろ〕の後ろ姿を見送った綾女〔あやめ〕は、複雑そうに表情を曇らせた。
「どうした? 綾女」
「あの子が、友だち……になれるのかと少し、気になって」
「? 心配なかろう。子ども同士なのだから」
 大人よりもずっと簡単に、壁を超える。
 と、彼は彼女の心配をよそに楽観的に述べた。
「いえ。真広は今までそういう関係をもったことがないのです……なにぶん、年近い ヒト のいないところで育ちましたから」
 ふぅ、と息をついて、困ったように微笑んだ。
「友だちというものを 理解 しているのか、どうか…… 不安 です」



 「奏江〔かなえ〕様」と名前を聞き覚えのない少年の声で呼ばれ、母にすがって泣いていた 彼 は顔を上げる。
 そこにいたのは、まるで御伽草子から抜け出たような、今ではあまり目にしない格好をした子どもだった。
「おまえは?」
 にこり、と笑うと少年は答えた。
「真広〔まさひろ〕と申します」
「まさひろ?」
 呆然と仰いで、涙が止まる。
「はい。今日からここにお仕えすることになりました……この方が、夜江子さまですか?」
 触れると、ひやりと冷たい体温が真広の指に伝わった。
 ベッドの四方に氷を置いていたと思われる形跡があるが、そこには水が張った皿だけが残っている。

「 よい 死に顔 をしてまする 」

 言うと、脇で戸惑うばかりだった奏江が声をあらげた。
「死んでないっ」
「? 魂がありませんので、死んでおります。未練も恨みもなく、穏やかなお顔で……安心いたしました」
「おまえ……なんだ?! 何しに ここ に来たんだっ。あっちへ行けよ!」
 ドン、と。
 怒りをあらわにして、奏江は真広を突き飛ばした。
 簡単に床に転がった少年に馬乗りになって、着物の襟首を掴む。
「僕の母上だ! おまえに 一体 何がわかるっ?!」
「……泣いて、おられるのですか?」
 奏江の目から ぽたぽた と降ってくるしずくに、真広は首を傾げて真面目な顔で訊いた。
 キッと睨まれる。
 いっぱいに涙をためた黒い瞳は、揺らいで歪む。
「見ればわかるだろっ! おまえ、嫌いだっ」
「きらい?」
「だいっ キライ だ!!」
 叫ぶと同時に顔を背けて離れると、足早に部屋を出ていった。
 残された真広は身を起こすと、少しの間思案して……「 友だち とは、難しいものですね」と低く告げ、彼のあとを追った。

  >>>つき と おに(冒頭3)。メモ終了。
 かなり、あとで校正を加えそうな箇所です。
 つーか、すでに前のメモもチョコチョコと修正してますし……例えば、奥さまの名前とか(笑)。
 喋り口調とか、もう少し詰めて統一しないといけないと思いつつ、メモなので流しています。←こらこら。

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 「高伊〔たかい〕」の屋敷は、文明が開けたとは言え、まだ珍しい西洋の様式を倣ったものだった。
 大きく広がった玄関。下履きのまま歩けるようになった板張りの床には、朱色の布……と言っても毛羽立った感触は、今までに馴染みのないふわふわとした感覚を真広に与えた。
(これは、どういう代物なのだろう)
 部屋を幾つか通り過ぎる間に、過ぎった疑問は多すぎて物珍しく辺りをキョロキョロと眺めてしまう。
 天井にぶらさげられた、大きな灯篭らしき物体を仰いで、立ち止まる。
 ひとつの大きな扉に案内した綾女は、そこにある金具に触れてコトコトと鳴らす。金具の形状はいかつい顔をした、イヌだろうか。
 それにしては、首回りがふさふさしていて、どことなくネコにも似ているが……。

「旦那様、綾女にございます」

 扉の向こうからほどなく許諾の言葉が返ってきて、綾女は扉を開けた。
 ギギッ、と低いしなりを帯びて広がった視界の向こうには、一人の男性が……やはり、あまり見慣れない西洋の黒い服をまとって立っていた。
「その子か――」
「はい……」
「真広〔まさひろ〕と申します。高伊様」
 真広が礼儀正しく頭を下げ、「よろしくお願いいたします」と挨拶したのを見て、屋敷の主人らしい彼は静かに笑った。
「シッカリした子だな。しかし、夜江子〔やえこ〕のこともある……幼い子に頼ってよいものか、もちろん君のことは信頼しているが」
 綾女に向けて、言う。
 彼女は微笑んで、答えた。
「旦那様、ご心配には及びませんわ。真広は確かにまだ 幼い身 ですが、鬼を視〔み〕る眼に長けていますの。潜在的な能力も高い上に、屋敷の内部に先入観もないほうが……此度の一件は解決しやすいと存じます」
「……君がそういうなら、そうなのだろうが」
 まだ、彼の方は歯切れが悪い。

「奥様がお亡くなりになったのは、十中八九 の仕業に間違いありません。が、それが私にはどこの者の仕業なのか、判断することができないのです……奥様の体に残った鬼の残滓を追いましたが、混沌としていて。これは、私〔わたくし〕と近しい者が関係していると考えた方がよろしいかと存じます。ひいては、この屋敷に近しい関係の者だと思いますわ……とても、辛い事実〔こと〕ですが」

「うむ……覚悟はしておる」
 重々しく頷いて、彼は綾女のそばに立つ水干姿の少年に歩み寄って、頭を手のひらで撫でた。
「真広〔まさひろ〕、無理はしなくていい。そうだな、息子の友だちになってやってくれ……ちょうど、年頃が近いのだ」
「友だち……でございますか?」
「そうだ。あやつは今、母をなくして荒れておるゆえ扱いにくいかもしれんが、まあ、仲良くしてくれればありがたい」
「わかりました」
 こくり、と素直に頷いた真広に高伊清信〔たかい きよのぶ〕は嬉しそうに目を細めて、「よろしく頼む」と小さな彼の手をとって、包んだ。

「息子の名は、奏江〔かなえ〕。今はおそらく、母の亡骸のそばに――」



「イヤだっ、イヤだーっ! 母上は死んではおらぬ。焼くなどと言うなっ!!」
 ベッドに眠る母に縋りつく少年は目に涙をいっぱいにためて、近づこうとする侍女たちを追い払う。
 死に化粧を施したい侍女たちは混迷し、「奏江さま、どうか……」「後生でございます」と周囲を右往左往しては、諭そうと試みる。
 けれども、彼女たちとて彼の心が分からないではない。
 幼くして母を亡くした子とは、不憫であるがゆえに強く接することはできなかった。

「ねえ、母上。イヤです……起きてください。僕は、そんなに 悪い子 でしたか?」

 ぼたぼた、と大粒の涙を冷たくなった母の白い頬に落として、彼は唇を噛んで呟いた。

  >>>つき と おに(冒頭2)。メモ終了。
 昨日の続き。
 ようやく、主の方が出てきましたが……まだ、会ってないし(笑)。
 子どもの使う言葉の処理をまだ、思案中です。もう少し、平仮名を多くした方がいいかしらねえ。
 子どもを登場させると、いつもこんなことに頭を悩ませていたり。

 次の場面は、まずは綾女さんの言葉を入れたいなあ。
 今回、そこまで入れようと思ったけど長くなったので諦めました。もう、旦那様出張りすぎ!

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性別:
女性
住所:
大阪府
職業:
たぶん、そのうち無色。
趣味:
主に恋愛小説の執筆ととめどない落書き。あと、HP運営。
自己紹介:
恋愛小説やら絵やら書いて、裏と表のHPを運営中。ココでは日々のこと、本編の番外か先行掲載を目的にツラツラ生息していこうかと思っています。
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こめんと
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