ルーヴェの恋。10

　「ルーヴェの恋」、第十話。
　次回、最終話です。が、こりゃ心配されるわ！　という終わり方でゴメンナサイ。
　私の中で、この姉妃さまは哀愁漂う悪役なのです。ふふふふふ。
　なんつーか、ツボです。
　幸せな彼女は、ある意味彼女じゃありません（←ひどい）。
　だからこその、ラウィードなのです！！

　さて、業務連絡です。
　１２月も近づいてきたので……「夕焼け」連載も始まります。
　その先駆けとして、拍手おまけの「夕焼け」ネタを切り替えました。ものごっつー短いSSですが……一応、「ご挨拶」ネタの直前の話です。
　よろしければ、どうぞ。
　書き捨て作品になりそうな、短さです（笑）。

　以下、「ルーヴェの恋」第十話。
　サラリといきます、サラリと。

――　ルーヴェの恋。10　――

　切実なルーヴェの願いは次第に手段を選ばなくなる。
　ツゥエミールが攫〔さら〕われ、ほかの男の手に下ったと聞いたレイドイーグはルーヴェを深く絶望させた。
　「ツゥエミールの代わりに」とサラリと口にして、戦場で「青い悪魔」と呼ばれる皇帝の冷徹な思考は、あえて相手が一番傷つくだろう方法を選び、しかも効果的に徹底して傷口を広げる。
　一片の躊躇〔ためら〕いもない、行為。
「――おまえの望みどおり愛してやろう」
　澄んだ目で、優しい唇で、慈しむ指先で――決して、「愛されない」ことを思い知らされた。
　彼が愛しているのは、 妹 で わたし じゃない。
　そんなことは、本当はずっと分かっていたけれど知りたくなかった。
　身体中に思い知らされて、横たわったままルーヴェは傍らに据える黒騎士に言った。
「どうして、抱いてしまわなかったの？」
　ずっと、自分に付き従ってくれたのはこの物静かな黒騎士だけだった。
　誰もの心が移っていったというのに、彼だけはここにいてくれる。
　涙が出そうになって、ルーヴェはその意味が分からなかった。
「わたしは「抱いてもいい」と言ったはずよ、ラウィード」
　静かな眼差しに、突然何かを感じとる。
　お腹をさすって、彼の前に肌をさらした。
「ラウィード、聞いて。できたかもしれないわ」
　ルーヴェには、その 閃き がとてもいいことのように思えて夕闇の中でくすくすと笑っていた。

「レイドイーグ皇帝の、皇子よ。分かる？」

　結局。
　受け入れてくれる、と思っていた黒騎士は彼女に指一本触れなかった。



　「直感」は間違いではなかった。
　事実、この時に妊娠していた。
　皇子を出産し、少しは正妃としての形を示すこともできた。
　なのに。……どうしてわたしは、時々すべてを消したい衝動に駆られるのだろう。
　皇帝色ではない鈍い銅色の髪が許せないのだろうか？
　それとも、皇帝を連想させる澄んだ青の瞳が憎いのだろうか？
　分からない。

　ただ、ひとつだけ確かなのは――この皇子〔イグザード〕が確かにレイドイーグの血を引いているということ。

　　>>>続きます。