クリスマスLover。おまけ

　「陽だまり」のクリスマスネタ、おまけです。
　おまけ、の視点は名もない彼らの一人でお送りします。名前を考えるのは面倒というよりは、忘れそうなので敢えてつけずに……必要にかられる日がくるまでは名無しの彼です。哀れ（苦笑）！

　このおまけ、の後の主人公二人の話が最後のクリスマスネタになります。年明けしたので、かなり季節外れになってきましたがもうしばらくお付き合いいただけると嬉しいです。

　以下、「クリスマスLover」のある脇役視点。
　先輩の性格が如実にあらわれた美大生友達（？）視点です。彼らは彼らで哀れな合コン体験者に違いないので（これでも）先輩は同情してます。
　何気に先輩目当ての女子大生がいそうな気配ですが、気づいてなさそう？　な感じが「彼」らしい。

――　クリスマスLover　～おまけ～　――

　念願の大学に入ってすぐ、目立つ男だと思った。
　優しく端正な顔は微笑みを浮かべると天使のように映って、悪いことなど何一つしそうにない。
　一度大学に来た彼が付き合っているという「彼女」は高校生で、これまた天使のように可愛いと噂になった。
　それ以来、彼は彼女を大学には呼ばない。
　案外、普通の 男 なのだと最近は思っている。

　グイッと腕を掴まれ、後ろに引っ張られると三崎純也〔みさき　じゅんや〕は目で「どういうことだよ！」と睨む俺たちに微笑んでみせた。
「まあ、そういうことだから彼女たちに奢ってあげてね」
「聞いてないぞ、オイ！」
「うん、言ってないし」
「　言えよっ！　」
　のほほん、と首を傾げる彼に俺はげんなりした。
「だって、合コンだって言ったのは君たちじゃないか。生活費を削れば会費くらい払えるだろう？」
「うっ、まあ……そうだけどよ」
　しかし、苦しい。今月の食費が。
「なに？　まさか、高校生の女の子に割り勘なんて姑息なこと考えてたワケじゃないだろうね？」
　責めるような純也の穏やかなのに鋭い眼差しに、「いや、ナイナイ！」と慌てて首を振る。
「よろしい」
「……甘い顔して恐ろしいヤツめ。唯子ちゃんは騙されてるんだろうなあ」
「はあ、可愛いもんなあ」
「三崎のモノじゃなきゃなあ……俺が守ってやるのに」
「写真撮りたい、拡大して現像する。イヒヒ」
　ポカッと頭をはたかれて、隣の怪しげな笑みを浮かべた友人は純也を恨めしそうに見上げた。
「なにすんだよ、痛いだろ」
「唯子を変な目で見ないでくれる？　あと、守る必要 全然 ないから。見当違いも甚だしい」
「いいだろ、見るくらい」
「妄想くらいさせろよ」
　ちなみに、俺のする妄想は彼と彼女のワンセットで登場する。
　彼女は文句なく可愛い。
　が。
　俺が妄想をするにはレベルが高すぎるんだ。脳内とはいえ、理想の天使に汚らわしい想像などできようはずもなく、相手は洩れなく彼しかない……悔しいが、お似合いだ。
　実際、彼らがイチャついているのを目の前で見ても、少しもヤラシイ感じがしないのは流石だと思う。
　恋人同士なのだから、きっと普通にエッチなこともしているだろうに……生々しい場面など想像もできないとはどういうことだ！　羨ましいぞ！！
「案外、心の狭い男だなあ？　三崎クンは」
　俺たちが口々に不平不満を垂れ流すから、彼は本気で頭が痛くなったようだ。心底嫌そうに顔を顰めて、声が一段と低くなった。

「狭くて結構。減るから見るな、妄想？　論外。二度とするな」

　スッパリと切り捨てて、俺たちから背中を向ける。「三崎の似非天使！　横暴！！」という悔し紛れの声を飛ばしたけれど、二度とは相手にしてくれなかった。

　　>>>その後、に続く。