夕焼けと机と教室と。5-3

　「夕焼け」本編5の続き、第３回。

　昨日、『千と千尋の神隠し』を見ていました。
　あのテーマで２時間、人をひきつけるのはまさに神業だと思うのです。うーん、イロイロな意味で監督の力を感じます。
　宮崎アニメといえば、脇の可愛いマスコットが外せませんが……『となりのトトロ』に続いて、この『千と千尋～』もそのマスコット性が素晴らしいです。
　私が好きなのは、「えんがちょ」の場面です。秀逸ですよね～アレは、子どもが喜ぶに違いないです。

　あと音楽も好きです。
　『千と千尋～』の挿入歌は、最後に聞くと胸にジンときますね。
　『スタンド・バイ・ミー』と同じくらい胸にくるのは、詩がいいのかなあ？
　切ないけど、生きる力にあふれてるというか。
　死生観は、重要ですよねえ。話の中に入るかどうかは問題でなく……描こうとしている世界が、それによって決まる感じがします。
　宮沢賢治の作品なんて、私の中ではその死生観で描かれている童話だと思うワケで……好きなんですよね。自分で書けないから余計に。

　以下、「夕焼け」本編5-3。
　輝晃くん曰く、「くそタヌキ」登場（笑）です。

――　夕焼けと机と教室と。～5-3～　――

　黒服の男たちに、マンションの前で連れ攫われるように車に押し込まれた小槙はホテルの一室に案内されて、硬直した。
「お待ちしてました」
　にっこりと、微笑んだ男性は「皇キラ〔すめらぎ　きら〕」という芸名を持つ元・モデルであり、八縞ヒカルの所属する事務所の社長、吉原元〔よしはら　はじめ〕だった。
　カリスマ的な美貌に、引退の際にはかなりの騒ぎになったものだったが……どうやら、経営の才も高いらしい。
　地味な役者の事務所を現在の名前の通った一流の事務所に育てあげたのは、彼の裁量によるところが大きいともっぱらの噂である。
　ソファから立ちあがった彼が、紳士的に小槙をいざなった。
「……あの」
「どうぞ」
　彼が本名をしるした名刺を差し出し、座るように促す。
　困って、小槙は立ち尽くした。
「輝晃くんのことで、お話があるのではないのですか？」
　やけに友好的な態度に、不信感を抱く。左手をとられ、手のひらにキスされるのも、小槙にはどうでもいいことだった。
「どうして？　ヒカルの彼女である 貴女 に私は興味があるんですよ――よく、知りたい」
「……はあ。知って……別れろと勧めるおつもりですか？」
　溶けるような優しい笑顔も、小槙の不安を煽るだけだった。彼は苦笑して、頑なに拒む彼女を見下ろした。
「勿論、ヒカルより私を選んでいただければ……とは思いますが」
「はあ……。え？」
　よく、意味が分からなかった。
　見上げれば、見惚れるような男の顔。その唇が綺麗な曲線を描く。
「私は、貴女を口説いてるんですよ。小槙さん」

　　>>>続きます。