つき と おに（冒頭）

　里から屋敷についた頃、逢魔が刻は過ぎ去って、夕闇に近づいていた。先を歩いていた「綾女〔あやめ〕」が空を仰げば、白い月が浮かんでいる。
「真広〔まさひろ〕」
　と、彼女が後ろについているだろう子どもを振りかえる。
　水干姿をした童子はぼんやりとあらぬ方向を見つめて、

「あそこに、鬼がおりまする」

　そう、口を小さく開けて呟く。その声は低く、子どもにしては大人びて聞こえた。
　綾女はその澄んだ子どもの目の先を追って、顔を上げ細くすがめた。
　いつの間に印を結んだのか、彼女は胸元で両の指を絡め唇だけで何事かを唱えると、ヒュッと風が舞う。
　真広はその姉のような存在の一連の動きを見つめて、終わったことを知ると歩いて近づいた。
「鬼は去りましたか？」
　綾女が問うので、真広は頷いた。
「消えました。姉上……鬼は消えて、どこに行くのですか？」
「……鬼は消えて、人の世に溶けまする」
　溶ける。
　なんて、曖昧な表現だろうと真広は思った。けれど、それが確かに消えた鬼の気配に見合っている。
　存在が忽然と消えるのではなく、霧散するという感覚に近い。
「溶けて……その先は、どこに向かうのですか？」
「人の、昏〔くら〕いこころの中に巣食います。こころがなければ、鬼は鬼になりませぬ。真広――」
　小さな手を握って、綾女はそのあどけない子に笑いかける。

　大きな門には、「高伊」の表札が掲げられている。

「――ここが、今からおまえの主人となる者の住む場所です」
　真広はその見たこともないような大きな門に、顔を上げた。
　幼い目には、立ちはだかる壁のように映る……巨大すぎる構えだ。
「よいですか？」
「？　姉上はおかしなことを訊きまする。そのような 権利 が我らにはありませぬ」
　先祖代々、「高伊」の家に仕え続けている一族。
　女は微笑んで、彼の手を引いた。
「それでよい。おまえは……そのように、したたかに生きなさい」
「はい」
「決して、簡単に心を許してはなりませぬ。まことの名も……ただ一人の君〔あるじ〕にだけ、お伝えするのですよ」
「はい」

　まことの名は、我ら一族のいのちも同じ。
　ただ、一人の君。
　違えぬと決めた主のためだけに生きるための、呪い。

　鬼が居座っていた門を抜けて、真広は屋敷の庭へと入った。
　煌々とまるい月が闇を照らす。
　国が開かれ、人のこころも昔のようにあつい信仰心だけで支えられてはいなかった。
　しかし。
　時代は発展を目指しながら、いつまでも原始的な欲望に弱いまま――。

　　>>>月ネタpart2。冒頭メモ終了。
　以下、ネタバレも兼ねまして、簡単な解説です（←いらないとは思いますが(^^ゞ）。

背徳の姫君。鳴海広之-その後。3（完）

　「背徳」番外、となりのイインチョ視点のその後、最終場面。
　私の中で、この鳴海委員長の性格はとっても好みな「彼」のひとつです。一途で彼女に対しては捻くれた態度をとりつつ、周囲に対してはのらりくらりとした器用なタイプ。
　苛められたい（笑）。
　前に文化祭の話をしましたが、「メイド喫茶」って文化祭の催しモノとして許される範囲なんでしょうか……とふと、心配になりました。
　文化祭の出し物って、生徒会がチェックしそうだけど……企画案がしっかりしてて、面白そうならいいのかしら？←そうなると、たぶん「メイド喫茶」では企画案は作らないよな。
　和装の袴服か洋風のメイド服か、悩むトコロです（←勝手に悩んどけ！）。

　どっちにしても、彼はあまり過激なことはしないハズですけどね。
　校内では（←こらこら）。

　以下、「背徳の姫君」番外、「鳴海広之-その後」3。
　彼視点の最終場面はこんな感じで……続きはまた後日、連載予定です。

背徳の姫君。鳴海広之-その後。2

　「背徳」番外、委員長視点のその後……第二回です。
　確か、この委員長は「明朗快活、公明正大」が座右の銘だったはずですが、（チラリと横のアンケートを覗いたら）鬼畜みたい？
　やだわ。どこで、間違ったのかしら（←何を今更(^^ゞ）？？
　彼が鬼畜かどうかはあまり自信がありませんが、ツンデレだなあ……と思うことは多々あります。ただ、あまり言葉にしないので「鬼畜」に見られるのかも。
　私の中で、鬼畜はどっちかというと「帝国秘話」の皇帝です（断言）！

　とは言え。

　「鬼畜」と言えば、メイドだな……ご主人さまだな……と妙なインスピレーションが降りてきました。
　この二人の高校最後の文化祭は きっと 「メイド喫茶」です（笑）！！
　はまりすぎっ、と思うのは私だけでしょうか。

　以下、「背徳の姫君」番外、「鳴海広之-その後」2。
　彼女視点の最後の場面まで……彼視点は、その少しあとまで続きます。
　余談ですが。
　ネット上でなぜお財布のヒモがゆるむのか、検証してみました。思うに、その時に実際にお金を払わないことと、配達されてくるまでの数日がとっても好きらしいです。←個人的趣向？
　なんだろう、あのドキワク感（うっとり）。

背徳の姫君。鳴海広之-その後。1

　「背徳」番外、となりの委員長視点のその後第一回です。

　やってはいけないことを、ついついやってしまいます。
　衝動買いしかり。
　でも、ネット上での買い物が一番キケンだと最近、身に沁みて実感しております。ついついポチッと押してしまいますね（←こらこら！）。
　……いや。
　危ない買い物ではありません（たぶん）。
　通常の店頭での買い物だと、結構財布のヒモが固い方だと自負しているのですが……ネット上はそれがゆるくなっているような（遠い目）。
　気をつけよう。
　これが、最後だ（と自らに言い聞かせる）。

　で、やってはいけないパート２。
　書くべき話がなかなか進まないから……と、違う話に現実逃避するのはダメだと分かってるんです。ホントです！←なんか、嘘くさい。
　どうぞ、「あー、また病気だ」とかかるーく受け流していただけると……大層、気が楽になります。ゴメンナサイ。
　地道にアッチの話も頑張るので……気長に、どうぞ心を大海原のように大きくしてお待ちいただけると……泣いて感謝します。
　ありがとう（←先払いしておきます）。
　ではでは、以下、そんな「やってはいけない」副産物の代物を連載していきます。
　先日、コレを「陽だまり」には載せない方向で……とか話していたと思うのですが、よくよく考えると前の三場面よりもよほど健全な展開だよなあと妙な違和感を覚えました。
　まあ、話が長くなるのでやっぱり「隠し」のほうに置く方向なのですが……この「その後」が起承転結でいうトコロの「結び」だと考えていいように思います。

　「背徳の姫君」番外、「鳴海広之-その後」1。
　三回連載予定です。

いかーん！

　雄叫び、している場合かどうか（笑←もう笑うしか！）。
　現実逃避をしている場合ではないのは重々承知の上で……やっちまったものは仕方ないので、言っちゃいますが。
　「背徳」番外のその後、彼視点とちょっとその後を書いちゃったので、ここで連載しちゃうぞ宣言だ、コノヤロー（逆ギレ）！

　もう、気にしないで（泣）。
　ひっそり頑張っていくので、見捨てないでください。ホント、某作品をお待ちの方にはゴメンナサイ！！